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詩『月が残した言葉』


カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
『ウッテヴァルデ・グルント』
(画像は拡大できます)

空の真上に昇った月が
眠りについた街を照らす

ぼくは一人 見上げている
柔らかく 優しい光が降り注ぐ
なぜか涙が ぽつりと落ちた

“どうしたの?” 
空から声が下りてきた
“わたしを見て 涙するのはなぜ?”

月の光が心を照らす
他人には見せたくない思いが
苦しいほど込み上げる

月が穏やかに問いかける
“今の自分をどう思ってる?” 

「……いろいろと」

“もう一度聞くよ
今の自分をどう思ってる?”

「……嫌でしょうがない」

なぜこんな言葉が出たのだろう
誰にも言ったことはない
でもぼくは そう思うことがある

“地球の人は……”
月は温かい光を放ちながら 続けた
”いつもわたしの同じ面を見ている
もう半分を見ていない”

“君も自分の同じ面ばかり見てないかい?
悪いことや不安ばかり見てないかな?
でもね……”

“わたしを見て涙が出るのは
諦めたくないからじゃないかな
自分を信じたいからじゃないかな?
今はそれが上手くできないだけ”

涙が ぽつりと落ちた

“自分を諦めないで”

そして
月は西の空へ沈んでいった

東の空が白み始める
夜が明けていく

一日が始まる

自分を 諦めたくない

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