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好きな曲~再出発と祝福の歌、そして事件

こんばんは。はると🍰です。
今回はジョン・レノンを二曲、ご紹介したいと思います。少し長いですが、よろしくお願いします。
一曲目はアルバム『Double Fantasy』(1980)のオープニング曲 ♪(Just Like) Starting Over。CMでも流れていたことがありますので、ご存知の方もいらっしゃるのでは?

70年のビートルズの解散、70年代半ばの失われた週末と呼ばれる荒れた時代、75年に息子ショーンの誕生を機に音楽活動を停止。5年間の主夫時代を経て80年に音楽活動を再開。Starting Overの言葉通り、新たな出発への意気込みと自信が感じられるような力強い曲です。
次のアルバム制作にもかかり、ツアーも計画していた矢先の12月8日午後5時、スタジオへ向かうために住まいのダコタハウスを出たジョンに一人の男が『Double Fantasy』を差し出し、サインを求めました。

サインをするジョン(左)
載せるかどうかかなり迷った写真。

「他に何かしてほしいことがあるかい?」
サインをした後、気さくにそう尋ねたそうです。
1988年公開のドキュメンタリー映画『IMAGINE : John Lennon』にも彼の人柄を象徴するようなシーンがあります。1971年のことです。

ニューヨークへ移るまでジョンが住んでいた家。
ロンドン郊外、アスコットにあるティッテンハースト・パーク。
広大な敷地を持つ大邸宅。すげー。

庭に何日か前から不審者がいる。そう聞いたジョンは、
「そうか。じゃあ、会ってみよう」
この人物は今では名前も分かってます。カート・クラウディオさん。23歳のアメリカ人でジョンに会うために訪ねてきており、
「会えば、目を見れば分かると思った」らしいです。なんか怖いですね。
「それは君の思い過ごしだ。幻想だよ」と、しばらく話し合い、そして「腹、減ってないか?」と食事を振舞いました。
ジョンという人は多くの人を引き付けてしまうんですね。そんなカリスマ的な魅力があった。自身も自分の弱さを知っており、迷っている人を見過ごしにできなかったようです。純粋に自分が求める答えを求めて会いにきた。そういう人にはシンパシーを感じてしまうのかもしれません。
でも世の中はいい人ばかりではなく、邪な輩も近づいてきたのです。

サインをするジョンの隣の男。犯人です。
午後10時50分、ヨーコ夫人とともに帰宅したジョンに ‘Mr. Lennon’と呼びかけつつ背後から銃を5発発射。背中と腕に4発被弾したジョンは ‘I'm shot. I'm shot.’ と叫びながら倒れ、すぐに病院へ搬送されましたが、動脈や内臓の損傷がひどく、ほぼ即死の状態で手の施しようがなかったそうです。
遺体の写真は盗撮され、検索すれば見ることができますが、最後は苦しまずに息を引き取ったという医師の言葉を裏付けるように眠っているような顏です。なお犯人は今も服役中で、仮釈放の申請は却下され続けています。
事件後の犯人とその妻には信じがたいエピソードもあるのですが、事件のことはこれぐらいで、ジョンの言葉と絵画作品を紹介したいと思います。

いま、この瞬間を生きよう。持ちこたえよう、その日その日を。持ちこたえていれば、美味しい紅茶が飲めるかもしれない。つかの間の幸せが手に入るかもしれない。(1970年)

X  ジョン・レノンの言葉

俳句や禅には最近、非常に影響を受けている。俳句は自分が今まで読んだ詩の形態の中で一番美しいものだと考えている。だから僕の書く作品も、今後はより短く、より簡潔に、そう、俳句的になっていくんじゃないかな。(1971年)

X  ジョン・レノンの言葉

二つ目はヨーコ夫人の影響が感じられます。自分にとって最も優れた絵画は禅画とも言っており、夫人から西洋画と違い禅画は一発勝負なのだと聞いて感銘を受けたのがきっかけだそう。白隠に影響を受け、自室に達磨図を飾っていたとか、代表曲 'Imagine' の「天国も地獄もない。僕らの上には空があるだけ」という歌詞を書いたと言われてます。

ジョン・レノン『Karuizawa '77』
このタッチ、筆でしょうか。

最後にもう一曲。84年発表のアルバム『Milk and Honey』収録の♪ Grow old with me  ユーチューブにはAIを使用したアレンジバージョンが多数あり、公式チャンネルの動画もストリングスアレンジしてありますが、アルバムはピアノ弾き語り、ドラムマシンのみです。制作途中のこの曲を、彼自身はどう仕上げたかったのでしょうか。
結婚式で歌ってもらえる歌にしたいという思い。タイトルの意味、最良の時はまだこれからという歌詞。聴いているといろいろ考えてしまいます。

「再出発」をしよう。「共に老いていこう」そんな願いは叶わぬものになりました。理不尽な暴力によって断たれた命。失ったものがあまりにも大きい。でもジャンル問わず、作者亡き後も生き続ける作品があります。
R.I.P. John. あなたの音楽もそうです。

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