『お洒落は我慢』の話
※下着に関する話題です。ご注意ください。(画像はありません)
『お洒落とは我慢』と言ったのは誰なのだろう。ある程度歳を重ねて、あまりにも言い得て妙だと思う。
1ヶ月ほど前に盛大に胃腸を壊した。胃腸を壊すのは初めての経験ではないが、それでもとても辛かった。食べたい物が食べられない、動きたい時に思うように動けない、急な体調急降下に怯える暮らし。まるで腹の中に爆弾を抱えて生活しているようだった。
今はほぼ完治しているが、一つ残ってしまった症状がある。
それは腹部の締付けへの耐性。つまりは、きついブラジャーがつけられないのだ。
下着の話をつらつらと語ることは憚られるが、私には衝撃的な体の変化だった。
私はわりと痩せ型な体型をしており、胸の脂肪もそれはもうささやかなものであるため、ブラジャーはワイヤーの入った締め付けの強いものを好んでいる。アンダーがグッと締め上げられる感覚は「背筋を伸ばしなさい!」と喝を入れられているようでもあり、活動のスイッチになるほどだ。
2ヶ月ほど前、新しいブラジャーに買い替えた。いくつか試着をして、より胸元が綺麗に見えるものを選んだ。買いたての下着によくあることだと思うのだが、かなり窮屈だった。それでもすぐに慣れるだろう、すぐに生地も伸びて、着心地が良くなるだろうと思っていた。
それよりも服を着たときのシルエットの美しさの方が嬉しかった。普段よりボリュームのある胸元は夏の薄着に映えるだろうなとワクワクしていたのだ。
そんな矢先に起こった体調不良。上腹部の締め付けに耐えられない体になってしまった。
数週間前に朝から外出をしたとき、電車の中で強烈な吐き気を催してしまい、最寄り駅でうずくまってしまった。駅員さんに介抱されて救護室で休ませてもらった。その日は寝不足であったこと、朝食を食べていなかったこと、朝からとても暑かったこと…要因はたくさんあったと思う。
それでも忘れられない。胃から突き上げられるあの苦しさが。電車で吐いてしまうのではないかと恐怖が。救護室でホックを外したときの開放感…もう大丈夫だと確信したときの、あの感情が。
ああ、だめなのかな。このブラジャーはもう着けられないのかな。とても…とても悲しくなった。
それから、下着について色々と調べた。悲しんでいても仕方がない。買ったブラジャーがつけられない。死活問題だ。
カップ付きインナーやスポーツブラ、ワイヤレスブラ、調べて、試着して、ユニクロの3Dモールドに落ち着いた。ユニクロってすごい…本当にすごい企業だ。初めてつけたときにあまりの快適さにびっくりした。こんなにも違うものかと。
軽く、苦しくなく、安い、そして乾きが早い(これとても大切だと思う)。どこでも手に入る。ええ、これでいいじゃんか。
2ヶ月前に買ったときとは違う感情だった。ワクワクというより、安堵だ。安心してつけられる下着を見つけられた安堵。
ユニクロのブラジャーにはパッドが無いため、ボリュームアップの効果は全く無い。モールドブラのため服に響くことはないが、前回買ったもののようにシルエットの美しさに惚れ惚れするようなことはない。むしろ鏡を見るたびに、げっそりとした本来の体型に落胆せざるを得ない。
でも、そんなものはいいじゃないか。
美しさよりも健康のほうが大切に決まっている。
歳を重ねれば肉体が変化していくのは当然で、我慢して窮屈なものを身につけるよりも快適に過ごせるものを身につけるほうが賢い。
そもそも我慢なぞ出来なくなるのだ。それはすぐに不調に繋がるから。
お洒落が我慢であるというならば、体が変化するということは、お洒落の幅が大きく狭まるということなのだろうか。
そんな悲しい話、あんまりだ。
私は今、目に見えて訪れた体の変化にとても戸惑っており、ナーバスにもなっている。急に突きつけられた変化はそれほどまでに衝撃的だった。
これからももっといろんな変化が訪れるのだろう。目を背けることなど出来ないほどに。
そういうものをポジティブに捉えられるほど、今の私はまだ強くはない。
それでも、誰もが通るであろうその変化に絶望したり恐怖を覚えて過ごしたくはない。
様々な理由で体の変化を経験した大人の方々の中に、美しい方がたくさんいる。当然のことだ。
それはその人が最初から持っている美しさだけでなく、間違いなく努力と試行錯誤を重ねた結果のものなのだろう。
私もそうなれるようになりたい。我慢という少々強引なお洒落だけでなく、今現在の自分に見合ったお洒落、美しさ、身だしなみ。そういうものを少しずつでも手に入れることができたらいい。そうやって身につけていくことこそ本当の意味の『個性』や『自分らしさ』ってやつなのだろう。
とはいえ、そんな少し強引なお洒落に後ろ髪を引かれている自分もいる。
そのためには…やはり健康だ。健康であることが一番だ。美しさは健康の上に立つ。そんな当たり前のことに改めて気づけたのならば、この件は悪いことでもなかったのかもしれない。
ポジティブに捉えよう。うん。
体調と体の変化、お洒落さと快適さのバランス、自分らしさへの追求…考えることが増えても、身だしなみを整える楽しさへの興味は尽きない。
むしろ、考えることが多いほうが楽しいのかもしれない。
全てはトライアンドエラー。色々試して自分にしっくりくるものを少しずつ集めていきたいところだ。
(なんだかユニクロのワイヤレスブラが良くないという論調になってしまいましたが素晴らしい商品です。こんな楽なブラは初めてつけました。
でもやっぱり悔しいので、暑い日や体調の良くない日はユニクロ、調子が良い日はワイヤーブラと使い分けようと思っています。)