『新宿ナイチンゲール』小原周子
本書の紹介
第12回小説現代長編新人賞 奨励賞受賞作品です。
実際は、受賞作に加筆・修正をしたものを出版したのがこちらの本になります。
著者は「小原周子(おはら・しゅうこ)」さん。
2017年に発刊された著書のあとがきに書かれている内容では、現役の看護師さんだそうです。
名字の小原は、風と共に去りぬのスカーレット・オハラから、周子の「周」は、敬愛する山本周五郎から取ったそうです。
本書を手に取ったきっかけ
内容に入る前に、著者とこちらを読むことに至ったきっかけを書きたいと思います。
こちらを紹介してくれたのも現役の看護師さんでした。
私は現在固定したパートナーはいませんが、当時、まあまあ真剣に探していたときもありまして、チャラいのは除外してマッチングアプリというのをいくつか登録していたことがあります。
※現在は興味が全くなくなってしまい、1つはパソコンで確認できるものなのでときたま、相手からのリアクションがあった時は使っているものの、ほとんど何もしていないに近いです。
私は同性愛者(L)なので、女性として登録をし、探す相手の希望としても「女性」になりますが、意外と女性で登録をしたら男性しかお勧めに出てこないアプリも未だにあります。
マッチングアプリとしてはほとんど人気のないあるアプリで、男性をお勧めにあげてくる「ざる検索機能」は健在しているものの、女性もきちんと紹介してくれるもので、ある時物凄く熱烈にアタックしてくれた女性がいました。
画像は掲載してもしなくてもいいのですが、掲載されている画像を信用するならとんでもなく美人さんで、私にとっては嬉しい「年上のお姉様」。私のことがとても「タイプだ」と言って、そのアプリで言う「ファボ」的なリアクションを沢山送ってくださいました。
私も自分の本当の画像を載せていたので、まあ不細工だと思う人は声をかけてこないので、「タイプだ」という言葉はそのまま受け取ってよいのでしょう。
私としては、その方はきれいでスタイルも良く、とてもスマートな方だったので、「なんで私なんかを好きだというのだろう?」と不思議でしたが・・・。
この方は本当に熱心にメッセージもくださいました。様々話す中で、男性とお付き合いもしたことがあるものの、今は「女性しか探していない」とのこと。
いつしか性癖の話にもなり、私もびっくりするようなご経験を数多くされているようで、SかMかを確認された際、私は「一切Mに転ずることはないドSです」と答えると、その方は「ドM」とのことで、さらに会いたいとプッシュされました。また、本も好きで、こちらを紹介してくれました。
ところが、この方は北海道在住。「北海道に来たらこことここに連れて行って、ここで泊まって…」とプランを提案されまくり、「東京に行って職場を探すからそしたら一緒に住むところを探そうか」とも言われました。ちなみに私は東京在住です。
私は恋愛にあまりスピード感のない人間で、この時は体調がよろしくなく、そのことも伝えてあったのですが、お互いの年齢的に「早く捕まえておかないと他の人に取られてしまう」と感じたようです。事実、近いようなことは何度か言われました。
のらりくらりというか、「○月に北海道こない?」とか「来年都内に引っ越そうと思うんだけど、どこかいいところある?」とか聞かれてしまったので、電話で話したこともなかった私は、確定したお返事ができずにいたら、ある日アカウントをすべて削除して連絡が無くなりました(笑)
まぁ、そういうご縁だったのでしょう。
連絡を取っている間は、読みたいものは多く、体調は悪くという状態だったので読まなかったので、人生で初めて「積ん読」が大量に発生していますが…。
あれから、しばらくたってそういえば紹介された「あれ」読んでみるかと購入して、やっと読み終えました。
あらすじ
「小説」というくくりで発刊されておりますので、”フィクション”だと思いますが…。
簡単に内容を話すと、現役の看護師さんが過去の辛い経験(病棟看護での医療ミスと先輩?上司?の看護師からの壮絶ないじめ、そしてその医療ミスが派閥同士の軋轢による、”仕組まれたものであったのかも?!”という展開)から、要介護者を専門とする看護師派遣事務所に登録をして、ネカフェで暮らしながら依頼されたお客様のご自宅へ行き、介護と看護をする日々を描いたものになります。
この事務所を立ち上げたのは「元看護師」のある女性。この方も色々な過去を持ち、そういったある意味で「同じ匂い」のする看護師の中で優秀な人を見極め、「相当なご事情があるご家庭の介護」を高額で引き受け、看護師を派遣する事業を行っていました。
主人公は、クズのような男(自称ミュージシャンでレーベル契約とプロを目指している)と付き合っており、仕事が入った折には、お客様のご自宅にもクズ男を泊まらせ、性行為もするというなんとも斬新なお話。
そして、そのクズ男の希望で踏みつけたり、自分を舐めさせたりといった、ソフトとハードの中間のようなSMプレイもしていました。
彼女自身はある種真っ当な人生を歩んできましたが、子どもの頃に挫折。親の希望というか、厳しいお母さまから逃れるように「看護専門学校」で学び、看護師として働いたものの、先に触れた経緯で、「表舞台」で働くことができなくなっていました。
親にも頼りたくなく、シャワーもあって、気軽に移動をできるネカフェにキャリーバッグで、あらゆる依頼先「要介護者宅」を行き来しています。
彼女自身には、小説を読んだ限りでは「S」という自認も、性癖も当初は無かったと思われます。
ところが、クズ男の起こしたとあるトラブルをきっかけに、反社会勢力に追われ、拉致され、暴行・監禁・性加害を受け、一時期は実家にも頼りましたが、結局またクズ男の電話一本を信じて、彼のところに向かうという、個人的には後味の悪い終わりでした。
SM的な部分については、クズ男の起こした事件をきっかけに裏社会の人間に追われ、逃げ惑う日々。その中で、いつも泊まっていたネカフェの店長に優しく介抱され、既婚者であることを承知で何度か体の関係になりますが、それが「あまりにも普通のセックス」という感想となっています。
本人自身、Sの自認も性癖もなかったはずなのに、丁寧に愛され、暴力を振るうことも振るわれることも、上下も何もないセックスを初めて経験し「物足りなさ」を感じてしまっている自分に気づいていきます。
感想
なるほど、彼女(出会い系アプリの)がこの小原さんを尊敬すると言い、「私も小説を書きたい」と言っていたのは何となく理解できるものがありましたが、私は現役看護師さんが書く、「現役看護師さんが主役の小説」という点で、どうにも「フィクション」と思えず、会ったこともない小原さんの「エッセイ」を読んでいるような気分になり、複雑な気分になりました。
ただ、「性愛」に関する内容、心境、普通の人とした性行為についての本音などの部分については、興味深く。
最初から持っていた”ある種の傾向”が、繰り返し行われることによってそこが「彼女にとっての通常ライン」になってしまったのか、彼女自身がやはり「そういった気質」があったのか。そういった部分を考察する点において、ある意味では勉強になりました。
私自身、色んな「性癖」を持っていますが、そこまでハードではない程度の「SM」も含まれます。
「バリタチ(同性同士の性交渉において受けに転ずることのない攻め)」であるのと同様、SMを仮にするのであれば「ドS」です。私はこういわれることが違和感しかないので好きではありませんが、要するに「女王様気質」ということになるでしょうか。
ただ、私自身は「相手が望まない限り」自分から「SM行為を持ちかける」ということはしません。
そこまで必要としていないからです。
本当のSMは「Mが指導者」と言われるように、誰かがサイコパス並みに人を傷つけるのを見ると、よく「ドSかよ!」と揶揄されますが、そういった自ら相手を傷つけたり、加害したりして、自分の「支配欲を満たす」ような行為は、実は「SMの本質」とは異なると私は考えています。
この話を始めると、これだけで1本では足りない量になってしまうので、今日はこの辺でやめておきます。ご興味がある方がいましたら、いつか書くかも??です(笑)
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