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「流行に惑わされるな――S&P500バブルの危険を見極める冷静な選択」

S&P500は現在最悪な投資先

さくらは、スマホをいじりながらベッドに寝転がっていた。派遣社員として働く日々は忙しいが、夜の時間だけは自分だけの自由なひとときだ。最近、さくらの興味を引いているのはSNSや掲示板で盛り上がっている「投資」の話題だった。

「S&P500に投資するのが間違いないよ!」
「長期で見れば必ず上がる!」

そんな投稿が次々と流れてくる。S&P500という言葉を聞いたことがなかったさくらだが、調べてみると「アメリカの有名な会社がたくさん入っている株の集まり」らしい。アップルやアマゾン、マイクロソフトなど、聞いたことがある大企業がその一部になっているという。

「みんなが勧めてるし、やっぱり安心なのかな?」

興味は湧くものの、投資のことは全く分からない。それでも、貯金がほとんど増えない現状を考えると、少しずつでもお金を増やす方法を学びたいという気持ちはあった。とはいえ、さくらの性格上、慎重にならざるを得ない。

そこで彼女は、頼りになる兄に相談してみることにした。


兄に相談

「ねえ、お兄ちゃん」
LINEでそう切り出すと、兄からすぐに「どうした?」と返信が来た。

「S&P500って知ってる?」
「知ってるよ。アメリカの株の集まりだよね。それがどうしたの?」

さくらは少し間を置いてから続けた。

「SNSとか掲示板でみんなが勧めてるから、私もやってみたほうがいいのかなって思ってるんだけど…どう思う?」

しばらくして兄から返信が来た。

「正直、今はやめておいたほうがいいかも。S&P500はかなり高い値段になってるんだよ。」


兄の説明

その夜、さくらは兄と電話をした。スマホ越しに兄の落ち着いた声が聞こえてくる。

「さくら、S&P500が高いってどういう意味か、簡単に説明するね。」
「うん、お願い!」

兄は少し考えてから話し始めた。

「S&P500っていうのは、大きくて有名なアメリカの会社を500社集めた株のグループみたいなものなんだ。それ自体は悪い投資先じゃないんだけど、今は『割高』になってるんだよ。」

「割高って?」

「たとえば、100円の価値しかないものが、200円で売られてるような状態のことを言うんだ。普通なら安くなったときに買うのがいいけど、今のS&P500はむしろ反対で、ものすごく高くなりすぎてる。だから、買ったあとに価値が下がる可能性が高いんだよ。」

「えー、そうなの?」

「今のS&P500はPERが23倍、PBRが4.2倍っていう数値になってる。これも簡単に説明するね。」

兄の説明によると、PERというのは株がどれだけ儲かる可能性があるかを見る指標で、23倍というのは過去の大きなバブルのときと同じくらい高い数字だという。そしてPBRは、その株がどれくらいの資産を持っているかを表すもので、これもかなり高い数字になっているらしい。

「具体的に言うと、この数字はITバブルの崩壊前とか、日本のバブル崩壊前と同じくらいの危ないレベルなんだよ。」


バブルの危険性

「バブルって聞いたことあるでしょ?」と兄が尋ねた。

「うん、テレビとかで昔のバブル時代の話とか聞くよ。」

「バブルっていうのは、物や株が本来の価値よりも高くなりすぎて、いずれそれが崩壊して一気に値段が下がることを言うんだ。だから、今のS&P500もその危険がある状態なんだよ。」

さくらは少し驚きながらも、「じゃあ、どうすればいいの?」と聞いた。


どうするべきか

兄は少し考えてから答えた。

「まずは、無理に投資を始める必要はないよ。今のタイミングでS&P500にお金を入れるのはリスクが高いと思う。それよりも、もし何かやるなら、安全な国債とか現金を持っておくのがいいかもね。」

「国債?」

「国債っていうのは、政府にお金を貸して、その利子をもらう仕組みのこと。株ほど大きく増えないけど、安定してるんだ。」

さくらは少し考え込んだ。「じゃあ、投資するならタイミングが大事ってこと?」

「その通り。タイミングと、自分がどれだけリスクを取れるかを考えることが大事だよ。でも、無理に流行に乗る必要はないからね。」


さくらの決意

電話を切ったあと、さくらはSNSでS&P500を推している投稿をもう一度眺めた。多くの人が「これしかない!」と熱狂している中で、自分が兄から聞いた話は、少し冷静に考えさせてくれるものだった。

「みんながやってるからって、自分もやる必要はないか…」

そう思うと、不思議と心が軽くなった気がした。さくらは投資のことをもっと勉強して、将来のために自分でしっかり判断できるようになりたいと思った。

SNSの投稿を閉じると、彼女は机に向かい、小さなノートを取り出した。「投資について勉強する」と書かれた新しいページを開き、兄から聞いたことを一つひとつ書き込んでいく。

「焦らなくてもいい。私のペースでやってみよう。」

それが、さくらにとって未来への一歩となる決意だった。


参考
バブルの世界史 ブーム・アンド・バストの法則と教訓 単行本 – 2023/3/25

新版 バブルの物語


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