Blue Sugar/Ren Zotto(にじさんじEN)歌詞和訳
個人的な和訳+その解説(言い訳)の記事です。
先に翻訳にあたってのスタンスを記載していますので、そちらもご確認ください。
翻訳のスタンス
なるべく意訳しすぎないようにしています。
和訳された状態でも、歌詞を受け取った人それぞれが自分なりに解釈できるように、訳者個人の解釈を和訳の段階で含まないように心がけています。
なので先にお伝えしておくと、サビは「あのブルー・シュガー・ハイを求めて」と訳しています。。。
なぜならsugar highという言葉は存在するものの、blue sugar highの段階になると辞書的な言葉は存在せず、それをどう解釈するかは本当に個人個人に委ねられていると思っているからです。
この言葉の意味/比喩の意味って何だろう、という目的で和訳を探す方もいると思うのですが、答えや解釈を示すような和訳ではないことをご承知おきください。解説の方では個人的な解釈にも触れています。
また正式な歌詞が分からなかったため、とりあえず行先頭を大文字にするような形で適用しています。最適な原文(?)がわかる方がいらしたらお知らせください。
和訳歌詞
Dizzy, dizzy
くらくらする
Can you fill me up 'til I'm myself?
君が僕を満たしてくれる? 僕が僕になるまでさ
Body's scattered 'cross the floor
床の上に散らばった体
Could have sworn I've been here before
前にもここに来たことがあるなあ
Oh, you're still here?
あれ、まだここにいるの?
Hoping for a banger? Wait another year
アガる曲が欲しいって? 来年とかまで待って
I'm preoccupied with my career
進路のことで頭がいっぱいなんだ
I want that, that blue sugar high
ブルー・シュガー・ハイを求めて 求めて
Cut me up, paint my insides
僕を刻んで、内心を描いて
I want that, that blue sugar high
Cut me up, paint my insides
(サビ繰り返し分は割愛)
Break me, take me, make me, hate me
僕を壊して、僕を連れてって、僕の一部になって、僕を嫌いになって
I'm already there, yeah
僕はもうそんな感じ そうさ
And the icing on top was the glitter I dropped
飾られてるアイシングは僕からは零れたきらめきで
And the avalanche came to drown me bitter
僕には雪崩がやってきて苦く溺れた
Keep me hollow 'til tomorrow
明日まで空っぽのままでいさせて
Won't I bother you with all my, with all my
困らせないかな、僕の――
Dress how you wanna, feel how you wanna
君は好きなように装って、好きなように感じてよ
Won't I bother you with all my tears?
困らせないかな、僕の涙で?
(以下サビ繰り返しのため省略)
和訳解説
ここからは英語的な補足、なぜそう翻訳したかの解説(言い訳)や、こう訳すかも迷った、こうも訳せると思う、という話をしていきます。
※ほぼ直訳の場合は特に言及せずスキップします。
ここは「僕が僕に戻るまで」と訳すか迷いました。意訳であれば僕が僕を取り戻すまで、くらい言っていいのかもしれません。
これは文法の話ですが、’til = until 「〜になるまで(ずっと)」で、こういう時間を示す接続詞?副詞?(when、beforeとか)のあとにはwillとかgoing toとか未来を表す助動詞だとかを使いません。なぜならuntilを使ってる時点で今とは別の時間軸であることが既に示されているからです。
つまり「'til I'm myself」と言っているということは、僕が僕自身である(I’m myself)、という状態ではないので、そうも訳せるよなと思ったのですが、今回はシンプルな訳にしようと思って「僕が僕になるまで」にしました(日本語でも「僕になるまで」と言った時点で今は僕じゃないことが伝わるので)。
Could have swornで「確かに〜したはずだ」。swornはswear(誓う)の過去分詞です。
※ちなみにswearは他に「罵る」「汚く言う」という意味もあるので、もしかしたら「swear words(罵る言葉)」の方が、ENライバーがこの単語を実際使った機会としては聞いたことがあるかもしれません。笑
bangerの訳し方は迷うところで、直訳はソーセージ、うるさい古自動車、爆竹(bangって音を立てるもの)らしいです。
ただ「a popular song or piece of music with a loud, heavybeat (= rhythm) that people like to dance to:」(人々が踊りたくなるような音が大きくてヘビービートな人気が出る曲または音楽)という意味も出てきたので、これを取りました。(引用はCambridge Dictionary)
careerは地味に迷ったところですが、英英辞典で見てみても職業や経歴、生活(生計)に関連した日本語の「キャリア」的な意味で合っていそうでした。一応経路や通り道といった意味も辞書には示されていましたが、現実的なことを考えなくちゃいけなくて……という感じと捉えて、「仕事のことで」「これからの生活のことで」あたりの間を取って「進路」にしました。
そして一番難しかったサビです。
もちろん曲名はBlue Sugarなのでhighは気にせずニュアンス付け足してるくらいの受け取り方でもよいのかなとも思いました。
ただsugar highで一つの言葉があることを知って(糖分による一時的な興奮状態、比喩的に一時的に元気になった状態も指す)、現実に向き合わなきゃ……というこれまでの流れから一致するかなと思い、そのまま残すことに。Blueを青とわざわざ訳すか迷い、何にせよここは歌詞を受け取った人の解釈に委ねられているところかなと思ったのですべてカタカナで強行しました。
次の行の「cut me up」「paint my insides」も、単語は全部簡単なのにすごく迷ったところです。
そもそも主語が引き続きIなのかyouなのか(命令文なのか)で全く変わってきてしまうんですけど、なのでどっちとも取れそうな微妙な日本語になっています。
あとは元々「To cut me up」だと思ってしまっていたという事情があり……。そうだったら完全に前の文を引き継いでいるので、主語が自分なのですが。
でも基本的に他の方が翻訳されている和訳ではyouが主語の訳が多かったので、じゃあ別の解釈があってもよいかなということでどっちかっていうとIが主語だと解釈している寄りの訳をしてみました。
内容に入って、先に「paint my insides」ですが、paintはポートレートを描く、みたいな、絵(作品・対象)を描く、という目的語をとることも、壁(物の表面)にペンキを塗る、という目的語をとることもできます。
「paint my insides」はどちらでも取れそうで、今回はinsidesという複数形だったので自分の内側にある色んなものを描きたい(出力したい、歌にしたい?)という意味かなと思って「内心を描きたくて」としています。bangerを求められても応えられないというのも冒頭にあるので。
一方で、「内側に色を塗る・彩る」という訳し方もできると思っていて、もしyouが主語であればこちらの方がしっくりくると思います。
日本語的に両方取れる訳し方ができたら個人的にはベストだったんですが、できなかったのでこういう訳になりました。
その上で、cut (me) upは「傷つける」とかの意味もあるようなのですが、内側に切り込んでいく、という解釈の余地もとれるような/cutの元々の動詞のニュアンスに近くしたくて、「刻む」を選びました。
ここから2番ですね。
訳が難しかったのはmake meで、「僕を作って」でもよいのかもしれないですが、makeには色んな意味がありすぎて……(日本語の「やる」的な言外のニュアンスの幅広さ)。
シンプルに「僕を作って」と訳すニュアンスと、「私を〜にする」(make me happyで嬉しくさせる、とか)の後ろが来てないけどただ自分に何かをもたらしてほしい、と望む感じと、あとは“そういう意味で”ベッドに誘うときの文句にもなるらしいと知って、そういう微妙さを含ませたかったので苦肉の「一部になって」。
あとは同じ音が繰り返す部分なので「嫌いになって」と合わせたかったのもあります。
ここのthereは前の行を受けて、壊してほしいとか連れていってほしいとかそういうぐちゃぐちゃした状態の域に達している、という読み方をしました。
この2行はSugarという言葉に関連する言葉遊びが楽しいところですね。
・icing:アイシングクッキーとかのアイシング
・glitter:反射して輝いたり、強い感情で目がギラギラするときの光。装飾用のグリッターも指す。
・avalanche:雪崩。*アイシング(iceは氷)の関連語
・bitter:苦い(ここでは副詞的)。*sugarやicing(=砂糖)の関連語
ここは一番の「fill me up」とは対照的で、かつ「Wait another year」と「あと1年」だったのがここでは明日までになってますね。
このあとサビが続くので解説はここが最後のパートです。
botherはENライバーも(例えばコラボを遠慮してしまうとかで)「迷惑じゃないかな?」とか言うタイミングでしばしば聞く言葉ですね。
自分が泣いてしまったら困らせないかな、という心配の中で、一度言葉を切って、僕が泣いたりしても気にせず自分の好きなように振る舞ってて、っていうのを間に挟んで、でもやっぱり困らせないかな、泣いたらさ――という揺らぎが示されてるように個人的には聞こえます。
ということで、ここまで訳してみました。
ここからは完全に自分の解釈になりますが、じゃあ結局Blue Sugar Highって何なんだ、Blueはどこから来たんだ、というと、青い瞳=自分自身の、とも取れるし、青い惑星=地球の、とも取れるのかなと思っています。
自分を取り戻したい、取り戻すための自分だけの何かが欲しい、というようにも、今いるところとは違うどこかのSugar Highを手に入れたい、というようにも。
そしてyouは誰なんだって言うと、これは自問自答の歌かなと思います。glitterは落としてしまった、現実的なcareerを考える自分と、bangerに取り組みたい、myselfでありたい自分と。そのアンビバレンスを解決してくれるようなBlue Sugar Highを得られたらいいのに、そうしたらinsidesに辿り着けるのに。泣いたらダメかなと思う自分と、見た目は気にせず思うままに感じろと言い聞かせ自分と、それでもやっぱり――。
まあこれは本人の“I wrote it as essentially a big ‘Fxxx You’ to myself”という発言にも影響されてるので素直に曲だけを受け取った解釈ではないかもしれませんが……。(元配信)
心の揺らぎがあちこちに見られて、でも曲調はアップテンポだから前向きにも聞こえるし、歌詞が響くと苦さや切なさも感じて、そのちぐはぐさがむしろ好きだなと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回が初めての和訳記事でしたが、今後他のにじさんじENの曲も投稿していきたいと思います。待ってくださる方がいたらとても嬉しいです!(ただ気長にお待ちください…)
それでは。