Casket/Ren Zotto(にじさんじEN)歌詞和訳+感想
個人的な和訳+英語解説の記事です。
歌詞に対する個人的な解釈もちょこっとだけ。
私個人の翻訳ベースに、解説とあわせてご自身で歌詞全体を理解する助けになれば……というのが記事の目的です。
今回の翻訳のスタンス
比喩的な表現は意訳しすぎないようにしています。和訳された状態でも、歌詞を受け取った人それぞれが自分なりに解釈できるように、訳者個人の解釈を和訳の段階で含まないように心がけているためです。
個人的な解釈や感想は別で分けています。今回は書いてるうちに楽しくなってそちらの文字数も多くなりました。
誤訳や疑問点ある方はぜひぜひコメント欄などでお知らせください。またこういう解説があって助かった、こういう補足もしてほしい等もコメントしてくださると励みになります……! Twitterなどでシェアしてくださるのも嬉しいです!
また、まだ少ないですが、他の曲も同じように大抵解説付きで訳しています。以下にまとめていますのでよろしければどうぞ。
歌詞和訳
Listen when they tell you take it easy
「肩の力抜いて」みたいな言葉には気をつけろ
My empathy redeems me
自分の思いやりに助けられはするけど
But maybe it'd be better off abandoned and buried in the sand
捨て置いて砂に埋められる方がマシだったかも
I'm living like a day-dream
白昼夢のように生きている僕を
You watch it on your phone screen
君はスマホの画面から見てる
I'll never be a stranger bound to shackles, what don't you understand?
余所者扱いで手錠に繋がれたりなんかしない
何が理解できないっていうの?
I don't care anymore
もうどうでもいいけど
I didn't fucking ask, yeah
頼んでもないのに
I'm your daily habit
僕はもはや君の日常の一部
Welcome to my casket (Casket)
ようこそ僕の棺桶へ(棺桶へ)
You thought I was a one-trick
あれしかできないと思ってたんだろ
Words are made of plastic
言葉っていうのはプラスチックみたいだし
Come back like elastic
エラスティックに戻ってくるもの
※繰り返しのため和訳割愛
I didn't fucking ask, yeah
I'm your daily habit
Welcome to my casket (Casket)
You thought I was a one-trick
Words are made of plastic
Come back like elastic
I live in your head (I live in your head)
僕は君の脳内で生きてる(君の脳内で生きてる)
Stream me ‘til it's dead (Stream me ‘til it's dead)
最期まで僕を再生しておいてね(最期まで再生しておいてね)
I live in your head (I live in your head) 僕は君の脳内で生きてる(君の脳内で生きてる)
Stream me ‘til it's dead
最期まで僕を再生しておいてね(最期まで再生しておいてね)
Don't you know I'm the prince?
僕があの王子だってご存知ない?
In my blood, in my prints
血筋をもって、軌跡をもって
I can do what I want
望むことを実現できる
Cast the shadow they haunt, yeah
人が集まってくるような影を落とすとか
I don't care anymore
もうどうでもいいけど
※サビ繰り返しのため和訳割愛
I didn't fucking ask, yeah
I'm your daily habit
Welcome to my casket (Casket)
You thought I was a one-trick
Words are made of plastic
Come back like elastic
I didn't fucking ask, yeah
I'm your daily habit
Welcome to my casket (Casket)
You thought I was a one-trick
Words are made of plastic
Come back like elastic
(I live in your head) (Stream me ‘til it's dead)
Why do I keep coming back? Back from the dead
じゃあなんで僕は何度も戻ってくるのか? 死んでたのに?
What was the word that you said?
君が言った言葉は何だった?
※以下繰り返しのためすべて和訳割愛
Why do I keep coming back?
Back from the dead
What was the word that you said?
Why do I keep coming back?
Back from the dead
What was the word that you said?
Why do I keep coming back?
Back from the dead
What was the word that you said?
I didn't fucking ask, yeah
I'm your daily habit
Welcome to my casket (Casket)
You thought I was a one-trick
Words are made of plastic
Come back like elastic
I didn't fucking ask, yeah
I'm your daily habit
Welcome to my casket (Casket)
You thought I was a one-trick
Words are made of plastic
Come back like elastic
Come back like elastic
英語解説
ここのListenは注意して耳を傾けて、と解釈しています。theyはpeopleみたいに、不特定複数の人々を指すときの使い方だと思います。
2行目にしていきなり難しかったです。empathyとredeem、2単語とも意味から確認していきます。
empathyは、相手の状況を想像して他人の気持ちや経験に共感する能力のこと(the ability to share someone else's feelings or experiences by imagining what it would be like to be in that person's situation / Cambridge Dictionary)。
redeemは意味いっぱいあるんですけど、商品の引き換えとかの意味は置いておいて(単語全体のイメージは同じなんだけど)、「補う」「回復する」といった、マイナス要素をプラスに戻していくようなイメージです。類義語にはrecover, satisfy, rescue, saveなどがあります。
なので、歌詞に戻って直訳っぽく当てはめると、「自分の共感能力が自分を回復させる/助ける」という感じ。
日本語にしても難しい……。
別で着目したのは、My empathyとMyをつけているところです。empathyというものは救いになるよね、っていう一般的な話をしているというよりも、僕には共感能力があるからそれが自分の助けになってる、と言いたいのかなと捉えています。
前段の、気楽に行こうよ、肩の力抜いて、みたいな耳あたりのいい言葉には気をつけて、という少し不穏な入りを踏まえて、ちょっと皮肉っぽい言い方の「助けられはする」という言葉を選びました。
ここは割と直訳です。単語の確認をすると以下の通り。
ついでに補足するとmaybeは日本語の感覚で使うよりも軽いイメージで、ググると40~60%と出てきます。
ここは割とそのままです。
前半は直訳的に直すと「私は手錠に繋がれた余所者にはならない(なることはない)」です。I'll neverという強い意志を反映させるような訳にしてみました。
strangerは教科書で出てきたような使い方で言うと道を聞かれたときに地元の人じゃないんです、別にここ詳しくないんです、という意味でI'm a stranger here.というフレーズがあったと思いますが、その使い方です。その場所をhomeとしていない人。
ここもそのまま。
割とそのまま訳しています。I'm daily habitの方は少し歌詞っぽくするために/日本語として自然になるように言葉を足しました。ちなみに迷った中に「僕は君のデイリールーティーンの一部」とかもありました。
関連して、habitとroutineの違いを調べてみたところ、habitの方が無意識に行う習慣であるみたいです。それもあって日常の一部、としました。
1行目はそのままで、2行目のone-trickが初めて知る単語でした。
one-trickで意味を調べるとone-trick ponyで出てきます。限られた1つのことや領域だけ得意な人・物(someone or something that is good at doing only one thing, or that can work in only one area / Cambridge Dictionery)。
あとはゲームで1つのキャラしか使わない/使えない人のことも指すようです。
日本語の辞書で調べると本当にこの「特定の分野にのみ能力を発揮する者」みたいな文で説明されています。
訳はちょっと解説ありきになってしまったかもしれないです……。
「あれしかできない」の「あれ」って何だよって感じですが、他のこともできるってことを示唆している、何か共通して特定の何か(あれ)を「できる」認識でいる、ということは伝わるかなと思い、シンプルな表現にしたい気持ちを優先してこうなりました。
ここはとても比喩的ですね。解釈せずにそのままの訳にしたところです。エラスティックもカタカナで強行してしまいました。
先にelasticの辞書的な説明をすると、「elasticなものは、伸ばして、元のサイズに戻ることができる(Something that is elastic can stretch and return to its original size: / Cambridge Dictionary)」とあります。英和辞典で調べても「伸縮する/ゴムの/弾力性のある」と出てきます。
またここで注目しておきたいのは、1行目の主語はWordsという冠詞(a, the)がない状態であることです。猫が好きです、と言いたいときにI like cats. と言うように、その単語全般のことを言いたいときは冠詞なしの複数形を使います。
なのでここでは特定の言葉を指しているのではなく「言葉っていうのは」と広く言葉全般のことについて言っていると解釈できます。
歌詞のイメージを膨らませるための補足として、made of plasticにも触れておきたいと思います。
プラスティックでできた、を比喩だとしてどんな意味かを日本語で想像すると、どこかちゃっちい作りなのかなという印象を受けますが、これは英語でも同様なようです(ロングマン現代英英辞典の3の用法)。
エリーラがカバーした「プラスティック・ラブ」も上辺の愛ということらしい。全然わかってなかったです。
歌詞に戻ると、つまりWords are made of plasticを一歩踏み込んだ和訳にすると「言葉っていうのはちゃちで壊れやすくて/取り繕われたもので/表面的なもので」ということになります。
elasticの比喩的な意味としては調べた限りはレジリエンスとかのポジティブな意味が出てきてあまりしっくり来ていないので、この解説のあとに書く個人的な解釈のコーナーで少し触れようと思っています。
*このあとサビ繰り返し
そこまで特別な訳し方はしていないです。
ここは特に変えていないです。ご存知ない? という訳が皮肉っぽく煽っていて気に入っています。
強いて言うならI'm a princeではなくI'm the princeと言っているので、あの王子なんだけど、という匂わせがあります。
I'm a princeとかI'm a princessという言い回しは全然あるようで、princeの前には必ず定冠詞(the)を付けるというわけでもなさそうなので、匂わせなのかなという判断になりました。
2行目はシンプルなんですが、1行目が難しかったです。
in one's bloodは、「もし何かの性質や才能がin your bloodだったら、それは生まれながらのものであったり、家族の他のメンバーもそれを持っている(If a quality or talent is in your blood, it is part of your nature, and other members of your family have it too.) / Collins Dictionary」ということで、つまり血筋・親譲りであるとか生まれながらの素質ということです。
ただこうして文頭に句を作っている例文はあまり見なくて、"be in the/someone's blood"でイディオムとして載せている辞書もあったくらいです(His father and grandmother were painters too, so it's obviously in the blood.→彼の父と祖母も画家だったから、明らかに血筋だ / Cambridge Dictionary)。
一方でin one's printsは私が調べた限りは特別にイディオムとして存在しているわけではなくて、かつprintは色々な意味がある単語です。
printの意味のうち、今回の歌詞で候補になるのは3つくらいではないかと考えています。
1つ目、printsと複数形で一番例文に出てきたのは紙とか布に出力された何か、という用法。本・雑誌、写真、映画フィルム、絵画など。
王子だってご存知ない? というフレーズに続くのであれば肖像画とか自分が書いた物とかそういうことかなと推測しました。
in my prints I can do what I wantだとこの世に出力されたもの(作曲したもの、映像として映し出されている自分)においてやりたいことを実現できる、と繋がる気もしますが、in my blood, in my printsと並べたときにピンと来なかったので私の和訳では選ばなかったものです。
2つ目はmy printsで例文を探したときに一番使われているようだった、指紋=fingerprintsの用法。
bloodと並べると両方身体にまつわることで、その人がその人であると証明できるもの。これもしかしI can do what I wantに繋げるのが難しかった……。
3つ目は、これが和訳に適用したものですが、跡、痕跡の用法。
in my blood I can do what I wantを「血筋(生まれながらに持っているもの)によってやりたいことを実現できる」としたときに、この用法だとin my prints I can do what I want「これまでの歩み・自分が残すもの(生まれながらではなく築き上げるもの)によってやりたいことを実現できる」と対比になるのがしっくり来てこれを採用してみました。
長い説明になってしまいましたが、そもそも答えを出さずに多義性のある言葉が使われていて色々な意味を孕んでいる歌詞である、という解釈もできると思います。
ここも少し混乱したところで、整理してみていきます。
単語から行くと、cast a shadowは日本語でも同じように比喩的な表現である「影を落とす」です。
そしてhauntの意味は主に2つあります。
文法的には関係詞が使われている文で、thatとかwhichが省略されている目的格の文ですね。they hauntという句は、直前の語のthe shadowを目的語とします。
英語の授業で関係詞が使用されている文を2つの文に分けなさい(逆に1つの文にまとめなさい)、みたいな問題がたまにあったと思うんですが、この文でそれをすると、以下のようになるはずです。
2文に分けると、の方を和訳すると、hauntをvisit的な使い方とすると「(僕は)影を落とす/人々がその影に出没する」になり、
trouble的な使い方だと「(僕は)影を落とす/人々がその影を悩ませる」になります。
今回はvisitに近い用法の、影に訪れる、出没するという方を採りました。
簡単な単語に置き換えると、cast the shadow they haunt→make the place they visitという感じ。
ちなみにここのtheyは冒頭のListen when they tell you~と同じく、不特定複数の人々だと捉えています。
なのでCast the shadow they hauntは結果として「人が集まってくるような影を落とすとか」と訳しました。
これってつまりどういうこと言っているのっていう私個人の解釈は後に書こうと思います。
最後の解説パートですが実はそこまで解説事項がないです……。割と直訳です。
このあとは繰り返しで終わるので、解説はここまでです。
以下、自分のための記録として個人的な解釈や感想です。
個人的な曲の解釈・感想
歌詞から一歩踏み込んで考えさせられたところでどんなこと考えたか、曲のはじめの方から挙げていきます。
my empathy redeems meから窺えるのは「相手の立場に立って考えることはよいこと」というスタンスで、maybe it'd be better off abandoned and buried in the sandは「そのまま放って見えない状態になる方がよかったかも」。empathyという相手に近付く要素と、abandonedという関わらずそのままにするという要素が対照的に思えます。
ここはtake it easyって言われたら構えろ、という歌詞のあとに続く部分なので、empathyを発揮する相手はそういうことを言ってくる人たちだと考えられます。
take it easyってどういうつもりで言っているんだろう? と相手の立場に立って考えることが自分を救うけど、でもそんなことせずに、言われても気にせず放っておけばよかったかも。
じゃあなんで「take it easyって、相手はどういうつもりで言っているんだろう?」と考えることが自分を救うのかって考えてみます。
思いついたのは、例えば自分が良くない状況のときに「気楽に行こうよ」とか言われたらちょっとムカついちゃうかもしれない、あるいは本当に気楽な気持ちでいていいのか分からない、そんなときに相手の立場次第でその言葉の受け取り方は変わるよねとかそういうことです。この人がそう言うんだったら本当に安心していいのかも、とか、いや全然事情知らない人に言われても仕方ないし、とか。
相手の立場を想像することがListenする(注意深く聞く)ことの助けになるけど、でもそんな風にempathyを発揮する甲斐があるんだろうか、abandonedにしてしまっていいのかも。
そんな感じでこのパートを受け取りました。
3行目のところ。strangerというのは、自分がhomeとしている空間の外部に所属する人と言えると思います。
この歌詞における"I"はliving like a day-dreamという、このスマホから見ている"you"とは別の生き方をしていて、彼らはスマホの画面で隔たれている。別の空間に所属している。
余所者っていうのはよく分からないから怖い、何考えてるのか何するか分からない恐れから手錠に繋がれたりする。
でもそういう余所者に俺はならない、と宣言しているのがここだと思っています。
あとに続くサビの中心は「Welcome to my casket」なわけで、むしろ自分側に引き寄せようとしているのがこの歌における主人公なわけですね。
what don't you understand? は個人的には、外側から観察するように全部見れるはずなのに何が分からないの? と「全部分かるはず」であることを前提にしたニュアンスと、お前には絶対俺を理解することはできないのに、何が分からないことを気にしているの? と「何もかもを理解することはできない」ことを前提にしたニュアンスのどちらで汲み取ってもいいかなと思っています。
VTuberにおける、インターネットやディスプレイを介してしか存在し得ない(彼らが存在し得る場所はすべて視聴者が認知し得る場所である)という側面と、でも見せている姿以外を理解しきることは絶対にできないっていう側面だと言うこともできそうで、面白いなと思います。
そして、でもお前にとって理解することができない・手錠に繋がれた存在であってたまるか、みたいなのは別にVTuberに限った話ではなくて、だから響く歌詞なんだと思います。
個人的にセクシャルマイノリティである私にとっては理解できないものを理解できないという理由で退けるっていうのは勘弁してくれと思うもののひとつなので、そういう自分の文脈を通したフィルターで見ても(聴いても?)好きな歌詞でした。
サビ前半のWelcome to my casketのところは別の場所でちょこちょこ触れていくのでここでは一旦飛ばして、サビ後半です。
You thought I was a one-trickはまさにお前が知る一面以外にも自分が持っているものはある、と示す言葉。
そして解釈の方に回しますと言ったCome back like elasticは、come backってどこに/どう戻っていくんだろう、というのを考えてみました。
他にも解釈しようは全然あると思うんですけど、個人的には誰かにかけた言葉が自分に返ってくるっていう解釈で主に歌詞を受け取っています。投げつけた言葉は自分に返ってくる――お前が俺に投げつけてくる言葉はどうせお前に返っていく、ということ。
後半で繰り返されるWhat was the word that you said? に繋がっていく気がして、しっくり来ています。
I'm living like a day-dreamとI live in your head、この歌には主語動詞がI liveの文が2つあります。
この歌全体を通して私が感じているのは、この歌における主人公(“I”)の主導権とか存在意義を誰が握っているか、誰が主人公を定義づけているか、みたいなことです。
I'll never be a stranger bound to shackles/You thought I was a one-trick/Don't you know I'm the prince? といった箇所からは、自分自身が自分の扱いや定義を決めるという意志や、他人が把握していない自分があるといった考えが窺えます。
I live in your headという歌詞は、自分は相手の内側で生きていると言っていて、上で述べたスタンスやyou watch it on your phone screenと画面上で隔てられてた感じとは真逆に思えるかもしれません。
ただ、君の脳内で生きてることと、君は僕をスマホ画面で見てる、は「君にとっての僕」という意味で似ているようにも思えます。
「君の脳内で生きてる」と言っているのは、君が認識している・認識できる僕は、君の脳内で存在する僕のことでしかない、と捉えることもできるかなと考えました。
このパートも先ほどの「自分の主導権や存在意義は自分が握っている」に関する解釈をしています。
自分がthe princeとして存在しているこの場所で自分が望むようにできるという自負をこの歌詞には感じていて、one-trick ponyだと思っていたyouをはじめとして、よく知らずに肩の力抜いて、とか言ってくるような「they」が出没(haunt)するけど、人々が集まってくる場所を作っているのは他ならない自分だということ。
なんか色々言ってきて上に立っているように思ってるかもしんないけど、でもこのプラットフォームは俺ありきの場所でしょ、みたいな。
そういう解釈を踏まえるとWelcome to my casketというタイトル含むこのサビの歌詞が腑に落ちる感じがしていて、つまりmy casketという“I”が主である場所へようこそ、ということなので……。
でもcasket(棺)へようこそ、というのがめちゃくちゃ皮肉で、次のところと合わせて考えるとかなり面白い……。
そして何度も繰り返されるこのパート。
I live in your head/Stream me ‘til it's deadとあって、つまり、君の脳内で生きて、死ぬまで再生され続けて、そして死んだ場所も君の脳内であるはず。
「君の脳内で生きてる、と言っているのは、君が認識している・認識できる僕は、君の脳内で存在する僕のことでしかない、ということなのではないか」と書きましたが、自分自身のことと、相手の中にある自分自身のことを切り分けているとも言えると思います。自分が思う自分と相手が思う自分を、別物として扱っているようなイメージ。
で、ここで生き返るのは自分が思う自分自身か、相手の中にある自分自身かどちらかと言えば、後者なのかなと思います。
Why~で理由を投げかけたあとに君が言った言葉は何だった? と言っているので、その言葉に鍵があるのだと思います。
そうすると、少し触れましたがサビのwords come back like elasticが繋がって、君の脳内で死んだはずの僕は、君がかつて僕に投げた言葉が戻ってくることで生き返る、という繋がりを見出すことができると考えています。
歌詞全体を通して、casketとかdeadとか言ってるくらいですし皮肉っぽくてネガティブなイメージが浮かぶパートも多いですが、でもポジティブに受け取ることもできると思っています。
まず、これは似た言葉で何度も繰り返してしまいましたが、自分の舵は自分で取る、自分を定義するのは自分である、という力強さ。
そして、「言葉は自分に返ってくる」というのを、その言葉を投げる人が気をつけなきゃいけない相手、自分のことを一面的にのみ見て何か言ってくる相手だとして、そういう人たちのことを皮肉って自分の舵は自分で取る、という解釈ができる一方で、全く違う方向で、例えばこの歌詞におけるyouを、絶対的な存在とは言えないVTuberという存在にポジティブな言葉を投げた人だとすると、全く見え方が違ってくると思います。
言葉は刹那的なものだけど、君の脳内から僕の存在がなくなったとしても、そのポジティブな言葉はいつか君に返ってきて僕を生き返らせてくれるかも、みたいな。
ポジティブな言葉を投げたことを何かのきっかけで思い出して(例えば同じような言葉を逆に「君」が誰かから受け取るとかで)、自分のことも思い出してくれるかも――それって僕が生き返る瞬間かも、という解釈。
無理があるかもしれないけど筋が通らなくはないと思います。別に言葉がいいものか悪いものかは歌詞の中に書いていないので、いい言葉を伝えたらいつかその人にいいものをもたらすっていうのを念頭に置いた読み方も、悪意を含ませた言葉を伝えたらいつかその人に悪いものをもたらす、というのを念頭に置いた読み方もできるかなと。
何だか歌詞の解釈というよりも、これは私がCasketという歌詞を解釈しようとする中で頭に浮かんできた考えと言った方が正確かもしれません。
*
たいへん長くなりましたが今回はここまでです。
色々考えさせてくれるタイプの好きな歌詞でした。
そしてこれで今のところ出ているレン君の歌詞はすべて和訳が揃ったことになります……! うれしい……!!!
今回は読み解くのに文法知識を使う場面が多く、ロジカルに構文解釈が絞られていったのが楽しかったです。
冒頭の繰り返しになりますが、誤訳や疑問点ある方はぜひぜひコメント欄やツイッター(@sakuto_en / @atto5573)にてお知らせください。
こういう解説があって助かった等の感想もコメントしてくださると励みになります……!
今後ものんびりペースではありますがにじさんじENの曲を和訳していく予定ですので、気長にお待ちいただけますと嬉しいです。着手予定などについてはたまにつぶやきでお知らせするようにしていこうと思っています。
それでは、ここまで読んでくださったあなたに感謝です! ありがとうございました。