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坊主になりたい私がバリカンを買う②

前回のあらすじ
髪を洗うことが面倒というQOLが下がりつつある状態なので、バリカンを買って、坊主を目指すことにしたが、次男の要望に応え、ちょっぴり長くベリーベリーショートくらいにすることにした。

私は基本的に説明書を読まない。
一通りは見るけれど、何せ頭に入ってこない。YouTubeも見たけど、忘れるのでまずは実践する。流石にバリカンの一発刈りは難しいので、最後の仕上げなどは夫に頼むことにした。

洗面所で鏡を見ながら…と思ったが、情けないことに立ってバリカンを使う体力がない。小さな腰かけ兼踏み台に座ったら、ちょうど目の前にドラム式洗濯機の窓にうっすら自分の姿が映っていたので、適当にそれを参考にすることにした。
この辺にもずさんさが表れているが気にしない。

肩まである長い髪をサクッと落としたら、物凄い爽快感だった。
このままジャリジャリと全部やってしまいたい衝動に駆られるが、次男との約束もあるので、慎重にアタッチメントを替えて少しずつ短くしていく。前髪はどうなるか分からないので最後まで残した。普段は前髪も長くしているからどの辺から前髪かさっぱりわからないし。

ふと、中学時代の友達のことを思い出した。
「将来美容師になりたいから、練習させて!」という彼女の頼みにはいはいと了承し、カットモデルになった時の事を。
彼女は器用なので割と上手にカットしてくれたのだが、本人は不満だったらしく「左右の長さが揃わない…」と悩み、その後母親にバレて物凄く怒られていた。
了承したのは自分なので、いやいやまあまあ、とその場を抑えた気がする。彼女は大人になって銀行員になった。美容師はどうした。

その時の彼女と同じく、左右の髪の毛の長さが揃わない。
あの時の気持ち、今ならわかるよ…と思いを馳せながら調子よくバリバリ削っていたら、左の短さが大変なことになってしまっていた。しょうが無いので少し頭頂部の髪を残してソフトモヒカンぽくする。楽しいけどとても大変。

同時に付き合いの長い美容師さんの「あなたは後ろの生え際だけ上に向かって生えてるから、ベリーショートに出来ない」というアドバイスも貰ったことも思い出して、実際にそれを実感したのだが、まぁいいやとガリガリ剃った。誰かに見せる髪型でもないので。

サリサリとした触り心地になった頭をシャンプーで洗い流そうと、お風呂場に立った時、今までドラム式洗濯機の扉でしか見えていなかった自分の全体像が初めて映った。
弟がそこに居た。
着物を着たのに「女装した弟くんみたい」と言われて憤慨したことがあったが、完全に目の前にいるのは弟だった。

そして次の日の歯医者の席で「帽子はとってくださいね」と言われ「ええと……頭が大変なことになっています……」と脱ぐ羽目になり、その翌日オーガニックコットンのぴったりやわらか帽子が通販で届いた。
やはり衝動的にやるものではない。

でもシャンプーは劇的に楽になった。
洗うのも乾くのも一瞬。
だけど、何故かまだお風呂には入れない。
昼間、髪が邪魔なのは解決したけれど、根本的なものが解決していない。何故だ。

そして2024年、あれから何回も頭を剃り、でも次男の卒業式があるからと泣く泣く伸ばし始めた髪の毛が、軽く結べるような長さになってきた。
生命力ってすごい。
ウィッグも買ったのだが、安いものを買ったのが悪かったのか、頭皮が痒かったり上手く装着できなかったりで使いこなせなかった。
そして今、まだお風呂にまともには入れていない私は、またバリカンで頭を全部剃ってやりたいと思っている。頑張れ、自制心。頑張れ、髪の毛。

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