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vinylという単語(前) 英語勉強中



読書中の本(Holes)に、このような文があった。

He poked his finger through a hole in the vinyl couch and pulled out some of the stuffing.

自分の知識だけで分割して訳す。

He poked his finger=彼はつついた/つっこんだ、彼の指を

through a hole in the vinyl couch=穴を通して、vinyl couchの

and pulled out some of the stuffing=そして引っ張り出した、中の物をいくらか


合体させると、「彼は指を vinyl couch の穴に突き入れて、なんらかの中身を取り出した」となりそうだ。
vinyl couch と stuffing がわからないが、stuff (もの)に ing がついただけなので、きっとstuffing も「もの」とか「なにか」でいいだろう。

では、vinyl couchとはなんだろう?
バイナイルコウチ?

しかし、私は couch はわかるのであった。
昔、「カウチポテト族」という言葉が流行ったことがある。
たしか「多くの時間を家のソファーでごろごろしながらポテトチップ食べてテレビ見て過ごすような、積極的に人生を楽しもうとしないろくでなしども」みたいな意味だったはず。
あの頃はまだ「外に出て仲間とワイワイ騒ぐことだけがこの世の真っ当な娯楽であり、家にこもってるオタクみたいな奴は負け組の犯罪者予備軍」的な風潮があったと思う。
まあそれを象徴するような連続殺人事件もあったし。
多様性が否定されていた時代だ。

ともかく、「カウチポテト」は「ソファーでポテチ」を表す言葉だった。
なので、カウチ=couchは、ソファーなのだ。


では the vinyl couch は、なんのソファーなのか?


余談は続く。
「カウチポテト族」という言葉が日本で流行したのは、1988年頃らしい。
昭和である。
二時代前になるわけなので、令和から昭和を振り返るというのは大正時代から江戸時代を振り返るようなもの、あるいは室町時代から平安時代を、邪馬台国の人々が縄文時代を振り返るようなものである(ちょっと違う?)。
よって、「カウチポテト族」という言葉に「あ~、あったねそんなの!」とピンと来る方は、けっこうなお年の方だと思う。私と同世代かそれ以上の方々であろう。

ちなみに私は、小津安二郎監督の映画『宗方姉妹』に出演していた頃の笠智衆さんと同じ年である。

『宗方姉妹』出演時の笠智衆さん(当時46歳)

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昔の厳しい時代を生きてきた人たちは、今の我々よりずっと成熟するのが早かったのだと思うが、見ようによってはもう46歳の笠智衆さんは「晩年」という雰囲気も漂わせているように思う。

つまり「カウチポテト族」にピンと来た世代は、私も含め、もはや晩年を過ごしている年代の人々ということもできるかもしれない。
司馬遼太郎の『龍馬がゆく』では、長州藩士・来島又兵衛(享年47歳)が、若い志士からも著者の司馬遼太郎からも老人老人と呼ばれていた。

もうそんな歳になってしまったのか私も……晩年か……。
坂本龍馬は32歳で薩長に手を結ばせ国をひっくり返す大仕事をやってのけたというのに、私は龍馬よりひと回り以上も上の歳になって、いったいなにをやっているのか? 

ただし、世間から老いぼれだの老骨だの翁だの呼ばれる(いや呼ばれてないけど)我々世代にも、英語の勉強となるといくらか強みがあると思う。
晩年の人間には、晩年なりの強みがある。
経験があるのだ。
だって、若者は「カウチポテト族」とか言われてもなんのことかわからないだろう?
カウチポテト族を知らなければ、couchという単語の意味をカウチポテト族から連想することもできない。それが我々翁は、「couchって『カウチポテト』のカウチだよ」と言われて「あーー、そうか! あのカウチか!!」と感情が動き、記憶を定着させることができるのだ。


このへんが、長く生きている者の強みだと思う。
我々晩年世代は、長くこの世にいる分、知らず知らずのうちに多くの英単語に接して来ているのだ。

他には例えば

dispel=恐怖や心配などを払拭する・払いのける

という単語があるが、これも我々は、記憶が簡単である。

我々が子どもの頃から成長を共にしている、ファミコン。
そのファミコンのファイナルファンタジーシリーズに、「デスペル(あるいはディスペル)」という魔法があり、その効果が「かかっている魔法を解除する」なのだ。
だから、「デスペルは魔法を打ち消すことができる」→「dispelの意味は『恐怖や心配を打ち消す』」というように、結びつけて覚えることができる。

また、
petrify=石化する、硬直する、身動きを取れなくさせる
という単語があるが、たしかファミコンの女神転生シリーズでは敵の攻撃で石化された状態を「ペトラ(の状態)」と言い、相手を睨んで石化させる特殊攻撃が「ペトラアイ」、石化を解消する魔法が「ペトラディ」だった。
当然 petrify にちなんでつけられた名前だろう。
だからpetrify……ペトリファイは、「女神転生で石化を表すペトラと似てる単語だから、つまり『石化させる、石のように動かなくなる』という意味だな」と、我々老いぼれ世代は簡単に覚えられるのだっ!! ドヤぁぁぁっ!!!
ざまーみろ。若い連中にはこういう覚え方はできんだろっ。


なお、ファイナルファンタジーも女神転生も、名作であるためシリーズがどんどん続き、現在でも新作が発売されている。
だから現代っ子たちもdispelとpetrifyは簡単に覚えられてしまうということだ。悔しい!!! 新作なんて発売されなければいいのに!!! せめて魔法の名前を変えて!!! 若者に簡単に英単語を覚えさせないような名前にして!!! 社会の厳しさを若者に教えてっ!!!


じゃあこれはどうだ?
lullaby という単語。これは「子守歌」あるいは「子守歌を歌う」という意味である。

lullaby=子守歌、子守歌を歌う

これも、シニア世代は簡単に覚えられる。
イモ欽トリオの歌、「ハイスクールララバイ」! 
これは1981年の歌だ。
そして、lullabyの発音がまさに「ララバイ」なのである。
まああんまり、歌詞の中に子守歌っぽい部分はないんだけど……
しかし我々は「lullabyは子守歌」という項目と対面した時に、「ああ~、あの『ハイスクールララバイ』のララバイか! あれは子守歌っていう意味だったのか! 歌詞に全然子守歌っぽい部分がないから気付かなかったよ!!」と、子守歌っぽくないからこそ余計にそのギャップにピンと来て、それで覚えられる。

でも素直な方向で覚えたいと言うならチェッカーズの「ギザギザハートの子守歌」。1983年。私はちょうど小学校入りたての歳で、チェッカーズ大好きでよく一人で歌っていた。
その「ギザギザハートの子守歌」の、サビの歌詞が「ララバイ ララバイ おやすみよ~」(音あり)なのだ!

小学生当時は、ララバイのことを「バイバイのナウい言い方かな?」程度に思っていた。サラバイみたいな。じゃじゃ丸とぴっころ、ぽろりも「さーらバイバイさーらバイ、げんきにさーらーバーイ♪」と歌っていたし。あのサラバイの親戚でしょ?(最晩年の人間にしかわからない話題)

そういうバイバイ的な理解で小学生の自分は「ララバイララバイおやすみを~~!」と歌っており、それから30年もの間「ララバイはバイバイのナウい言い方」だと思い続けて来たのだが、二時代を経て、2021年にやっと気付いた。ララバイはバイバイのナウい言い方ではなく、「子守歌」を意味する英単語だったということに!! 
だから「ギザギザハートの子守歌」のサビなのか。だから「ララバイララバイおやすみを」なのか……。

このように「そうだったのかっ!! ララバイはサラバイと同じじゃないのかっ!! 30年間間違って覚えていたっ(号泣)!!!」という驚きがあれば、もうlullabyが子守歌だということは絶対に忘れない。認知症にでもならない限りはずっと覚えていられるだろう。と言ってももう晩年に突入しているので、認知症の発症までせいぜいあと4,5年だろうけど……。

後編へ続く(ひと休みして読んでね)



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