コロナ完治後に、好きなおやつが変わった話
さくさくです。
今年のゴールデンウィークにコロナにかかりました。
喉のイガイガから始まり、40.2℃の高熱を叩き出して、激しい喉の痛みののちに、平熱に戻りました。
それから1ヶ月ほどは、世間でよく言われている「味と匂いが分からない」という症状が出ました。
でもそれも終わった頃、さらに別の症状が出始めたのです。
それは今も続いていて、もう3ヶ月ほどになります。
その症状とは……
おやつの好みが変わった、という症状です!
くだらない、と思われるかもしれないですが、これに関して記事にするくらい色々あったのです。
※※※
コロナからの復活後、いつものようにスーパーへ食料調達に出掛けました。
食材などを選んだあと、自分の好きなおやつをカゴへ。
私の「レギュラーおやつ」は、かっぱえびせんやポテチ、チョコパイ、ミックスナッツ、スーパーで売ってるケーキやシュークリームなど、スナック菓子やチョコレート菓子ばかりでした。その中から厳選して買い物のたびに色々なおやつを買っていました。特にチョコレート系は大好きです。
けれどその日は珍しくおせんべい売り場へ足を向けたのです。
そして棚に並ぶ赤い袋のおせんべいを見つけました。
「わー、これ懐かしい」
そのおせんべいは、亀田製菓さんの『まがりせんべい』でした。
名前の通り、平らではなくボコボコと曲がっているおせんべいで、その味は「まろやか醤油味」です。
20年ほど前にも、好きで何回かは買ったことのあるおせんべいでした。長い間買っていませんでしたが、懐かしさに負けて1袋購入し、おいしくいただきました。
するとそれ以降、どういうわけか『まがりせんべい』を食べたくて仕方がない、という症状が出始めたのです。
仕事中にも「早く家に帰って、まがりせんべいが食べたい」と思うようになりました。
電車での通勤中や、休みの日になにか作業をしている時も『まがりせんべい』のことばかり考えている、というおかしな状態になりました。
以来、『まがりせんべい』を食べる量が徐々に増えていきました。
数日後には、一人で1日に1袋を食べきるようになり、その後2袋を開けるようになりました。1袋には16枚のおせんべいが入っています。会社へ行く前に1袋、帰ってから1袋食べていました。
ある夜、自宅で『まがりせんべい』の在庫を切らしてしまった時には、急遽コンビニで他のおせんべいを買って食べてみましたが、『まがりせんべい』でないと満足できないことが分かりました。
「明日絶対に『まがりせんべい』を買う!」
そう決意して眠りに落ちました。
そんなふうにご飯以外は『まがりせんべい』ばかりを食べるようになり、好きだったチョコレートや他のスナック菓子には見向きもしなくなりました。おやつとして買うのは『まがりせんべい』オンリーになりました。
週1回のペースで食糧調達の買い出しに行っているのですが、1日に2袋食べるということは、1週間に14袋必要ということです。
食べる量を減らすとストレスになりそうでしたし、そのうち飽きるかもしれないので、我慢せずにしばらくは食べたいように食べようと考えました。幸い、今のところ体重も増えていません。
14袋を1日で確保したい。
けれど、1ヶ所のスーパーで買い漁ると非常に目立ってしまいます。
さすがに、カゴいっぱいにおせんべいの袋を入れてスーパー内を歩くのは恥ずかしいです。目立ちたくないのです。
かといって通販で買うのはスーパーより割高だし、1箱12袋入りのようなので、いずれにしても足らない。
だったらどうすればいいのか。
答えは簡単です。
複数のお店で少しずつ買えばいいのです。
その結論に至った結果、戦略を立てることにしました。
まずは自宅近辺で置いてありそうなお店を洗い出します。
スーパーだけでなくドラッグストアにも置いてあることをXで知りました。
行きつけのコンビニにはないことも実際見て知っています。
すると、頭の中でこんな地図が出来上がりました。
お宝か財宝でもあるのかと思いますが、埋もれている財宝は『まがりせんべい』です。私にはお宝なのです。
頭の中のこの地図を元に、次の休日、買い出しに出掛けました。
スーパーにはもれなく置いてありましたが、ドラッグストアは、店によっては扱っていない店舗もありました。
『まがりせんべい』を追い求めて歩く中で新たな発見もありました。
これまで10年間なにげなく通っていた商店街の奥まった場所に、小さなスーパーが2軒もあることに気づきました。食材が新鮮そうだし、お値段も全体的に安めで意外な収穫でした。
それぞれのお店で2~3袋ずつ買っていきます。いつも行ってるスーパーでは、別のレジに2回並んだりもしました。
両肩にかけたお買い物バッグには、満杯の『まがりせんべい』が入っています。
こんなに何かに対して一生懸命になったのは久しぶりです。目標があって、それに向かって必死になれるのって素晴らしいと思いました。創作でそういう経験はしてきましたが、食欲では初めてでした。
複数のお店で買い漁った結果、その日は合計17袋もの『まがりせんべい』を手に入れることができました。置いてある店・置いてない店合わせて9店舗ほど回りました。
何かに必死になれるのって素晴らしい、とさっき言ったばかりですが、さすがに自分はアホなのかもしれないとも思いました。
そんな生活が続いていた7月の頃、年1回の会社の健康診断を受けることになりました。『まがりせんべい』にハマることによって体重は増えていませんでしたが、コレステロールや糖分の取りすぎなど、血液の質の面は気になっていました。
一連の検査を終えて、最後に内診が待っていました。
診察室に入ると、若そうな男性医師と、チャキチャキした感じの中年の女性看護師さんが笑顔で迎えてくださいました。
持病について軽く話したあと
「最近、ご自身で気になることはありますか?」
と医師から訊ねられました。
その先生は、まだお医者さんになったばかりのような雰囲気をまとう、遠慮がちな学生さんみたいな先生でした。
せっかくなのでと思い、私は打ち明けました。
「5月にコロナにかかりまして、復活後にある銘柄のおせんべいだけが食べたくて仕方ないという症状があり、今も続いています。
これはコロナの後遺症でしょうか?」
真剣に相談する私。
目が点の医師と看護師。
「えっ…そういった症状は聞いたことがありませんねぇ…」と医師は戸惑っていました。
お医者さんの仕事にまだ慣れてなさそうな初々しい若者を困らせてしまいました。
けれども、これがいずれ一つの症例として、この先生の何かの研究の役に立つ日が来るかもしれません。そうなれば情報提供した身としては本望です。
健康診断を終えた私は、勝手に清々しい気持ちになっていました。
数日後に届いた健康診断の結果は、『まがりせんべい』の影響で何かが変わるわけでもなく、特に問題ありませんでした。
さらに時を重ねて9月になりました。
20年以上ぶりに、仲のよかった友達4人と会うことになりました。仲良しな仲間だけでの同窓会です。
その場でも、私はみんなに自分の現状を話しました。
『まがりせんべい』にハマりすぎていること。
買いだめの量がすごいこと。
健康診断でのこと。
昔のまま変わらない友人達は、驚きながらも楽しんで私の話を聞いてくれました。
ランチとカフェを済ませたあとには全員で近くのスーパーに行き、各々買い物をしました。
そこでも私は『まがりせんべい』を買う始末。しかも3袋。
みんなは買いませんでしたが、後日、4人ともそれぞれ自宅近くのスーパーで買ったという報告がグループLINEで来て、私は『まがりせんべい』の布教に一役買ったようです。
そんなLINEを見て友人は言いました。
「それだけ広めてるんやから、亀田製菓から表彰されるレベルやな」
ほんとそうです。
友人達に話す前に実家の両親にも自分の症状を話したところ、影響を受けた父がまがりせんべいを買って食べたらしいです。確実に広まっています。
ぜひ表彰してほしい。
そして副賞には『まがりせんべい』1年分とかがほしいです。
『ハッピーターン』でも『柿の種』でもなく、『まがりせんべい』さえあればそれでいい。
友人達も買ったという話を実家の母にLINEしたところ、キャラが爆笑している絵文字が2つ並んで送られてきました。
数日前から風に秋を感じるようになりました。
それでもまだ『まがりせんべい』が手放せません。
この記事も食べながら書きました。
このおせんべいにひかれたのは運命かも。
袋を見て、あらためてそう思いました。
私のためのおせんべいやん!
偶然とは思えないような偶然に運命を感じてしまった、おせんべいの話でした。