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2021年に見た心に打ち込まれた映画

はじめに

 さて、今年もやってきました年間映画ベストを発表する時が。
 今年も疫病禍の影響がまだ色濃く存在し、劇場に足を運ぶのは気の引ける日々が続いていました。そんな毎日の合間を縫ってこそこそと映画を見ていたらいつの間にかランキングを作れるくらいは本数を積み重ねていました。

 確かに今年度も閉塞感に満ちた辛い年であったのですが、それでも徐々に明るい陽射しの差す兆しも見えてきた年でもあります。映画としては、前年、前々年度から公開が延期になっていた作品がやっとのことで封切りされて日の目を見る機会ができました。それぞれの作品の出来や売り上げはともかくとして、
 このまま以前の日常を取り戻せる日が到来することを祈っています。

 前置きは置いといて今年度の映画ベスト10はこんな感じです。

2021年度映画ベスト10

⑩劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト
⑨サイコ・ゴアマン
⑧ゴジラVSコング
⑦JUNKHEAD
⑥シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
⑤マトリックス レザレクションズ
④マリグナント 狂暴な悪夢
③ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
②モータル・コンバット
①コンティニュー

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

ワ イ ル ド ス ク リ ー ン バ ロ ッ ク

 各種配信サービスで有料レンタルで見れるから、本編と総集編ロンドロンドロンドを見た後に見ろ!


サイコ・ゴアマン

 強いぞサイコ・ゴアマン! 迫り来る怪人たちをやっつけろ!
 少女はサイコ・ゴアマンを操り地球《家族》を救えるか!?

 ポスターと予告編を見て惹かれるものがあったら今すぐ見ろ!

 かつて宇宙で暴れまくった恐怖の悪魔を操れる不思議なストーンを拾った少女とその兄。少女は悪魔にサイコ・ゴアマンと名付けて己の欲望のままに好き勝手放題しまくる。しかし、悪魔の復活を悟った宇宙にいる正義の集団《テンプル騎士団》が彼を狩ろうと追っ手を差し向けてくる。
 果たして少女とサイコ・ゴアマンはどうなってしまうのか!?

 

この表情がアカデミー賞級


 完全に悪の魔人チックなデザインのサイコ・ゴアマンが最早メスガキを超えたメスガキと言っていいほど傍若無人な少女に散々好き勝手な扱いを受けるそのギャップが面白い。
 日本の特撮を想起させる着ぐるみキャラたちや理不尽なゴア描写に反して、そのストーリー自体は真っ当な(?)ファミリー映画になっている可笑しさ。
 とにかく自分の好きな物を詰め込みましたというビジュアルでありながら、一本の映画としてはきっちり筋の通った理性のある仕上がりになっているのが予想外でした。
 あとラストの展開が好き。いい話風に締めるんじゃねぇ地球が大変なことになっているんだぞ。

ゴジラVSコング


ボンクラ映画の極北

 整合性なんて小賢しいものは地の底に置いてきた脚本。
 今となっては笑えない陰謀論者の登場人物。
 全世界にアヘ顔を晒す小栗旬。

 とにかく瑕疵のありまくる問題作でありながら、滅茶苦茶金のかかっているであろうゴジラとコングの凄まじいバトル! 前作のKOMが黙示録であり神話ならこっちは世界を揺るがす壮絶バトルだぜという開き直ったボンクラ精神が眩しくてたまらない。

 こんな作品が大規模な予算をかけて作られて更に大ヒットするアメリカは狂うちょるの……!

JUNKHEAD

雌伏7年、熱い情熱と狂気で育まれた渾身の一作

 2021年に話題になったストップモーションアニメといえばあの『PUI PUI モルカー』があるが、『JUNKHEAD』も凄い! 製作に途方もない手間暇のかかるストップモーションアニメの傑作が2本も出るなんて2021年、ヤバいぜ!

 SFであり、アクションでもあり、モンスターホラーでもある様々なジャンルを内包したこの一作は予告編を見て少しでも刺さる人間だったらもう本編を目にしたら魂を奪われること間違いなし! 

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||


このポスター好きだけど日向と青葉とマヤが省かれてるのかわいそうだと思う


 シンエヴァは見る人はもう見てるから余計な説明は要らんでしょ(適当)


 まさかエヴァンゲリオン新劇場版を見て真希波に脆弱性を突かれるとは思わなかった。シンジくんよぉ……まさかそのルートを開拓するとは思わなかったぜ……。

マトリックス レザレクションズ

 マトリックスの一作目を見た時は衝撃的だった。当然の如く俺はリアルタイム世代では後追いだ。公開当時は最先端だったCGやカンフーアクションは現代の映画と比べると見劣りしてしまう。そんな時代の流れという制約がありながらも、その鮮烈なビジュアルとストーリーに俺の心はノックアウトされた。
 レッドピルを飲んで世界の真実を知っても待ち受ける現実は最悪だ。機械のイカに隠れながら潜航する狭い船内で、襤褸切れのような服を着てクソ不味そうなオートミールを食す毎日だ。
 だが、ひとたびマトリックス世界に来れば、俺はカッコいいスーツを纏い、イカしたヘアスタイルをキメたクールな世界の真実を知る”選ばれし者”だ。エージェントは怖いけど俺は銃をバカスカ撃てるし究めたカンフーで戦うことができる。
 そうした世界の真実を知り、影ながら管理社会と戦う俺という厨弐的な設定にこだわり抜かれた色褪せた廃墟を思わせるロケーションやセットの美術、黒コートにサングラスという衣装センスに二丁拳銃やカンフーというボンクラ極まりない戦闘スタイル。
 ラストシーンそして流れるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにエンドロールのマリリン・マンソンの Rock Is Dead 。
 最高と言わずして何と言えようか!
 まあここ数年でレッドピルとかなんとかが最悪なネットミームと化してしまっていたが……。

 しかし、リローデッドにレボリューションズと続編を見ていくうちに当初俺の感じていた魅力がどんどん薄まっていくのを感じた。ザイオンとか正直どうでもいいし、評議会とかセンチネルの大群とのバトルとかなんじゃそりゃ。俺はマトリックスを見たいんじゃ。ネオとトリニティとモーフィアスが物語の中心にいなきゃ駄目なんじゃ。
 「この世界は機械に支配されているクソみたいな世界だけど俺はその真実を知り戦う”選ばれし者”なんじゃ。俺はマトリックス世界なら柔術もカンフーもヘリの操縦法もプログラム一発で習得できて無双できるんだぜ」というボンクラ的な快楽が次第に損なわれていき、なんか人間と機械どちらの勢力もネオとエージェントスミスというデカい存在を同時に失う痛み分けで手を打ちましょうやというしょうもない結末で終わるのがなんだかなぁ……。(ネオとエージェントスミスのラストバトルは好きだが)

 それでこのレザレクションズである。俺はマトリックスシリーズではレザレクションズが一作目の次に好きだ。

 トリロジーのような鮮烈なアクションもビジュアルもないし、世界観にストーリーはスケールが狭く、こじんまりしている。オリジナルキャストの何人かは出てこないし、何よりネオもトリニティも年を老けてしまっている。
 このレザレクションズに俺の好きだったマトリックスの面影は殆どない。

 しかし、俺はレザレクションズが好きだ。このレザレクションは鮮烈なビジュアルにアクション、スケールの大きい世界観を捨て去りつつも、一作目の精神を現代に語り直そうとしているのだ。

 年を取って身体は昔の様に動かなくなってきたし、現実や社会を知ってしまい若い頃の様に理想に燃えることなどできなくなった。今更レッドピルを飲んで”選ばれし者”や救世主になる気なんてさらさらない。
 それでも闘わなくてはならない。俺は”選ばれてしまった者”なのだから……。

 そう、これは”選ばれし者”ではなく”選ばれてしまった者”の物語。どうやら自分の後の席に座ってくれる若者はいないようだし、かつて愛し合った女(ひと)は今の俺と同様に偽りの現実に囚われている。

 だから俺は再びレッドピルを飲まなきゃいけない。

(レザレクションズ、トリロジーの頃より年を取ってしまったキアヌ・リーヴスとキャリー・アン・モスを再登板させた意味のきっちりある作品でしたね。メイクもライティングも顔のしわを隠さずにきっちりその加齢の様子をカメラに映していました。そしてそれが作品の重みや味わいを生み出していたと思います。)


マリグナント 狂暴な悪夢

 予告編を見ていざ鑑賞と劇場に臨んだ俺を待ち受けていたのはジェームズ・ワンの贈る怪作にして快作の一大ホラー巨編だった。
 序盤中盤と所々に粗を感じさせつつもテンポ良くグイグイ進むストーリーテリングに夢中になって楽しめましたが、どうせこんな感じで締めていくんだろうなと予想しながら見ているところがありました。
 だがそんな舐めた態度の俺は終盤の衝撃の展開に黙らされる!
 クライマックスの壮絶な展開にジェームズ・ワン! お前これがしたかったのかと唸らされること間違いなし。
 予告編とあらすじ以外の情報をなるべく入れないで見て欲しい一作でした。


ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

ソフト版だと銃のない気の抜けたデザインになってた……。

 人の命は尊い。
 しかし、人がゴミの様に死んでいく映画が大好き。

 そんなあなたにオススメする一作。
 不祥事からしばらく表立った活動のなかったジェームズ・ガンの復帰作はまさかのDC映画。MCUではその手腕を見せつつも鳴りを潜めていた彼の残虐な作風が今作では冒頭から花開く!

 この『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』ではゴミのように人が死んでいきます。なぜなら、文字通り国家に首輪(爆弾付き)を付けられた凶悪な犯罪者(ヴィラン)たちが主人公だからです。
 彼らは荒れ狂う暴風雨のように暴力を振るい、その通った道には屍しか残りません。時として、敵の暴力によりなすすべなく死んでしまうこともあります。しかし、彼らに仲間の死を顧みる暇などありません。なぜなら、彼らは体制という暴力にその命を握られているからです。
 けれども、死と暴力に溢れた本作は荒涼で索漠とした作品なのでしょうか。それは違います。その理由として彼ら犯罪者(ヴィラン)たちにも愛と矜持があるからです。彼らも普通の人たちと同じようにそうした尊い感情を持っているのです。
 そして、彼らの愛と矜持が時として太陽のように輝きを見せてくれるのがこの作品の魅力のひとつでもあります。


モータル・コンバット

MORTAL KOMBAT !!!!!!!!!
GET OVER HERE   !!!!!!!!!

冒頭7分だけでもいいから見ろ!!!



コンティニュー

 お前も『コンティニューで』死に戻りループを繰り返して人生を見つめ直せ

 予告編はこちら

 2021年度は『ガンズ・アキンボ』『フリーガイ』とテレビゲームを意識した作りになっている作品があったが、この『コンティニュー』はその中でも出色の出来だった。
 
 作品の内容自体はよくあるループものだ。ある日の朝起きた主人公が謎の殺し屋たちに襲われ、死ぬ度にまたその日の朝に戻りループしていく。いわゆる死に戻り系のループ。主人公はろくでもない人間だったがループを繰り返して同じ一日を過ごしていくうちに徐々に自分の人生を見つめ直していく。

 そういう作品は映画では『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ハッピー・デス・デイ』と偉大な過去作があり正直な話何番煎じなんだよという思いがある。

 しかし、今作には大きく違う点がある。なんとうか話の作りがゲームっぽいのだ。
 ループを繰り返していくうちに主人公が様々なスキルを身に着けて強くなっていくという要素はループ作品にはありがちだが、本作ではそれがゲーム的なスキルの習得のようである。中華ダイナーにいる中国人女性から剣術を学ぶ下りは剣術スキルを覚えるためのミニイベントみたいだ。
 通行人の車を奪ってカーチェイスするところなんてモロにGTAやセインツロウだし、どの時間帯や場所に殺し屋が現れるか死にながら記憶して次のループで役立てるストーリー上の展開も死に覚え要素のあるゲームみたいだ。  離れて住む息子と触れ合うシークエンスは、本編の流れとは関係のないサブクエストみたいに感じる。

 こうして書くと単にゲーム的なルックを取り入れているだけの作品のように思われるが、この作品にはゲームへのリスペクトを感じる部分もある。主人公がレトロゲームに触れてその楽しさを発見するシークエンスがあるしね。
 ゲームは人生の歩みを止める暇つぶしに過ぎないのかもしれない。けれど、その暇つぶしが人生をもう一度見つめ直す機会になり得ることもある。
 作中で主人公が体験しているループも、同じ一日を繰り返すことで人生の流れを一旦止めている。いわばゲームみたいなものではないか。主人公はループ(ゲーム)を通じて今一度人生を考え直すことになるのだ……。
 なんだかよくわからない話になってしまったがまあ適当に流してほしい。
 
 『コンティニュー』は人によっては見た後すぐにその内容を忘れるようなB級作品でしかないんだろうけど、俺は上記のゲーム要素やループを通して自分のこれまでの人生――離れて暮らす妻や息子、セルフネグレクト気味の毎日――を見つめ直して前に進もうとする主人公の姿が心に深く突き刺さって仕方がなかったよ。


おわりに

 それはそれとして俺はまだ巷で話題沸騰中の『ベイビーわるきゅーれ』『ただ悪より救いたまえ』『レイジング・ファイア』をまだ見れていない。ベイビー~はともかく後の二作は地元では来年にならなければ上映されないからである。なので当然ランキングに反映されていない(見ていたらランクインしていただろうからね)。なんというか消化不良感というか、愚地親子とか花山薫の出ていない最大トーナメントみたいな……。この場所にあの猛者たちがいないなんて……!という中途半端感の残る年間ランキングになってしまった。(もちろん今年度のランキングに入っている作品は傑作ぞろいだけどね)

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