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ラジオ戦士DJ。ZOOMのハンディレコーダーと俺たち
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2009年夏「今夜は誰もいないから事務所で飲もうぜ」と友人を誘うと、買い揃えたばかりのDJ機材と合わせて愉快なガジェットを新調して持参してきた。彼が「ポッドキャストを録れたらいいなと思って」と開封したのがZOOMのハンディレコーダーH4だった。ふたりで収録しながらなぜか電話をかけた様子を録りたいという話になり、iPhone 3GからのアウトプットをH4にライン入力できないか四苦八苦した覚えがある。
飲みながら夜な夜なピザ屋にデリバリー注文したり、女友達に電話しては「使えそうなワード」を発してもらうべく必死に誘導した。この収録でサンプリングできた女友達の発した「殺すしかない」は以後、彼がパーティーでDJプレイする際の必殺のワンフレーズとなった。そしてこの夜以来、ZOOM H4が活躍する機会はなく、どこかにやってしまったというなんとも独身貴族らしい一件だった。
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時を経て2020年、世界的パンデミックもあってか10年前の黎明期より増してポッドキャストが注目されるようになった。自分も番組を立ち上げたくなって今度は私がZOOMのハンディレコーダーH6を用意した。SAMSON Q2U ダイナミックマイクとの組み合わせは抜群で、プロ音質な波形を得られる。32bitフロート録音が全盛の2024年となっては型落ちとなるのだが、収録機材としての信頼感は変わらず強い名機だ。PCでのリモート収録、DJI MIC2を導入しての屋外収録と、カジュアルな収録手段が確立した今なおバックアップとして本機を活用し続けている。
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’00年代後半の第一次ポッドキャストブームの際、ラジオのコアリスナーとして誇りある肩書とされたラジオ戦士。その熱量が若干明後日の方向へむかって買ってしまったZOOMのハンディレコーダーH4。DJ機材は全て売り払ったマコッチではあるが、あの時のリビドーこそが今の番組づくり根幹にあることに敬意を評して『ラジオ戦士DJ』と呼んでいる。そしてお互い世帯をもち、その喜びと憂いを愉快にインターネットへ垂れ流せることを嬉しく思う。
そう、カジュアルな姿勢ではあるが適度な緊張感も持って赴くリモート収録飲酒は、我々にとって低コストかつハイパフォーマンスな「救い」になっているのである。さくれいリスナーの皆さん、毎度のご愛顧感謝。