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風の色【#シロクマ文芸部】

風の色を視ることで、豊穣を占う風読みの一族がいた。
穀物が豊作の時は、穏やかなこがね色の風がそよぐ。
凶作の時は、鈍色の風が吹き荒ぶ。

「風読みの者よ。今年は豊作だろうか」
王が風読みに問うた。

風読みの若者は頭を下げ、申し立てた。
「王。今年の風は例年になく凶々しいものです。国家を揺るがす凶事が起きるに違いありません」

「風読み風情が、王に箴言を申すな!」
側近の怒りを買い、風読みは洞窟内の牢に閉じ込められた。

風読みの若者が帰らないので、一族は大騒ぎになった。

一族の長老が風を使い、若者の居場所を探したが、洞窟内までは風は届かなかった。

長老は弱った体を押して、王に会いに行った。

「あの者は私に、国のことに口を出す無礼を働いた。だから、牢に入れた」
王は冷たい目で、長老を睨んだ。

「ああ、何てことを。王よ、あの子は国を思って申し立てたに違いないのに。どうか、あの子を早く釈放してください」

しかし、長老の願いは受け入れられず、風読みの一族は国外追放になった。

謁見の一部始終を見ていた者がいた。それは第一王女だった。

風読みが捕らえられている牢に忍び込み、出してやった。

「風読みよ、この国に何が起こるの?」
王女が質すと、風読みは答えた。

「大雨による大洪水がこの国を襲います。民を高台に避難させてください」

王女は自分の名で、民の避難を呼びかけた。

民は間一髪、避難することが出来た。

畑は大水に沈み民は絶望したが、国外にいた風読みの一族が食糧と来年分の種を民に与えた。

民は大多数が隣国に移り、王の国は滅んだ。

第一王女は行く末を見届けてから、隣国へと降嫁した。
こがね色の風が、第一王女を迎えたという。


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