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こねこのきょうだいと、海【#ウミネコ文庫応募】

 こねこの黒ねこクーちゃんは、4きょうだい。

 いちばんめのお兄ちゃんは、カイくん。あたまのてっぺんにもようがあるよ。きのぼりしたり、おさんぽするのが好きで、クーちゃんはカイくんのお話を聞くのが楽しみだよ。

 にばんめのお兄ちゃんは、ナギくん。ひだりの耳から目のまわりにかけてもようがあるよ。おっとりしていて、よくおひるねしている。いっしょにいると、あたたかい気もちになるよ。

 白ねこのお姉ちゃんは、メルちゃん。左目がきんいろ、右目があおい。クーちゃんは、やさしいメルちゃんが好き。

 クーちゃんの本当の名前はクルーズ。4匹のきょうだいの一番下の妹。生まれたばかりのときは、からだが弱かったんだ。かいぬしのハルさんが、クーちゃんが無事に大きくなれるよう、おまもりの【まがたま】を首にかけてくれた。今ではとても元気になったよ。

 ハルさんは、きょうだいが草むらでないていたのを見つけて育ててくれた。ひとりぐらしだったけど、にぎやかになって楽しいと、ひだまりの笑顔を見せてくれる。4きょうだいみんな、ハルさんが大好きだ。

 ハルさんは、ときどき海のお話をしてくれる。カイくんも、ナギくんも、メルちゃんも、クーちゃんも、海とよばれるものを見てみたいと思った。

 ある日、カイくんが「海を見に行かないか?」と言った。

「海、見れるの?」
 クーちゃんはワクワクしていた。

「ちょっと、カイくん。どうやって海まで行くつもり?」
 メルちゃんはカイくんに聞いた。

「バスに乗れば海に行けるって聞いたんだ。ハルさんが帰ってくる夕方までにもどれば、ハルさんに心配かけないよ」
 カイくんは、海に行く気になっている。

「私、海行きたい!」
 クーちゃんは、カイくんについて行くことにした。

「私はふたりだけじゃ心配だから、ついていってあげる」
 メルちゃんもいっしょに行くことになった。

「ナギ……はよくねてるから、おるすばんしててね」

 3匹は、海をめざしておうちをぬけだした。

 バスていには、ちょうどバスがとまっていた。3匹がバスに乗ろうとした時、小学生の男の子に3匹はつかまってしまった。

「ねこちゃん、バスに乗るには『うんちん』をはらわないと乗れないんだよ!」

 けっきょく、きょうだいはバスに乗れなかったので、トボトボおうちに帰っていった。

 おうちでは、ナギくんが泣いていた。おひるねから目をさましたら、だれもいなかったからだ。

「海にいこうと思ったんだけど、ナギはおひるねしてたから……」
 クーちゃんがナギにいいわけをした。

「なんで?起こしてくれれば、ぼくだってみんなと海に行きたかったよ!」
 ナギは悲しくて悲しくて、ずっと泣いていた。

 夕方、ハルさんが帰ってきた。4匹のきょうだいがなぜか元気がないのをふしぎがっていた。

 動物のお医者さんにみせたが、「ぐあいがわるいところはない」と言われた。

 ハルさんは、きょうだいには【きぶんてんかん】がひつようだと考えた。

「カイ、ナギ、メル、クー!みんなで海に行こう?」
きょうだいの耳が、ぴくぴくっとうごいた。

「海?いま、ハルさん『海』って言ったよね?」

「言った言った!ぼくたち、海に行けるの?」

 きょうだいたちは、大よろこび。

 天気のよい日曜日、ハルさんは4匹をちかくの海につれていった。

 はじめて見る海は広くて、ざぶんとして、きらきらしていた。

 きょうだいたちは、すなのかんしょくが気にいり、足あとをつけてあるいた。

 なみがちかくまでおしよせると、クーちゃんはびっくりしてにげてしまった。

「みんな、元気になってよかった!」
 ハルさんにもひだまりの笑顔がもどった。

 夕方、遊びつかれてねむってしまったきょうだいをかかえて、ハルさんはおうちに帰った。

「また、海に行こうね」

 ゆめの中では、ハルさんもきょうだいもおさかなになって海でおよいでいた。


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さくらゆき
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