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紫陽花の花言葉 4

学生時代の兄は、兎にも角にも目立つことを嫌った。愛想笑いはするものの、自分から他人の輪に入ることは決してしなかった。それが他人に踏み込まれない為の、兄の処世術だったのだろう。

中学時代に一度だけ、兄が書道で賞をとったことがあった。兄はそのことを両親には黙っていた。兄が賞状を学校のゴミ箱に捨てたのを、兄の担任が拾い、弟である俺に渡してきた。

兄との交流は母に禁じられていたので、本人に渡すわけにもいかず、家の自室の勉強机の引き出しにしまっておいた。

ある日、母が勝手に部屋に入って、机の引き出しから兄の賞状を持ち出した。
「『ゴミ』を勉強机にしまっておいたら、駄目じゃないの。」
そう言うと、母は冷ややかな笑顔で俺の目の前で賞状をビリビリに破り捨てた。

母は俺には猫可愛がりしていたが、逆らったら兄に対してのような冷たい仕打ちをされるのではないかと、恐ろしかった。

父は家庭の居心地が悪いからか、仕事ばかりしていた。一族に後妻として充てがわれた母に、愛があるようには思えなかった。それが却ってプライドの高い母の、父への執着を深めていた。父は、俺には時折優しい表情を見せてくれてはいたのだけれど……

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