紫陽花の花言葉 15
兄はゆっくりと腕をほどいた。そして、真剣な目で俺を見ている。
「『始める』って、何を?」
俺は兄の意図が分からず、聞き返した。
「今まで兄弟とは名ばかりで、まともな会話すらしてこなかっただろう?俺は律花さんを怖れていたけど、清明は何も悪くない。清明さえ良ければ、これから新しい関係を築いていきたいんだ」
「それは、家族だから?」
「……俺は家族の絆とかは分からない。だけど……親友家族が俺のことを大切に思ってくれているのは、とても温かいんだ。新しい関係が育まれた先が、家族の絆になるかは分からないけど、清明とはこれからも会いたい」
俺は兄とは違って、両親との関わりはあった。だけど、家族団らんとは程遠いものだった。まさか、兄からこんな提案をもらえるなんて、思いもしなかった。
「俺……も、兄さんと新しい関係を始めたいよ」
俺の心に温かいものが流れ、目からこぼれ落ちていった。
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