ただ歩く【#シロクマ文芸部】
ただ歩くだけしか許されない、死ぬまで。
それが国を滅ぼすという大罪を犯した、僕に残された償い。
AIロボットに見張られ、どのぐらい歩き続けただろう。
まさか国のトップとして自分が下した決断が、全国民の命を奪ってしまうなんて。
『罪人X。国を滅ぼした罪で、命が尽きるまで自ら滅ぼした地を歩き続けよ』
判決は裁判ロボットによって下された。
与えられるのは、簡単には死なれない程度の量の水のみ。眠ることは許されず、空腹と疲労を感じながら、汚染された土地を歩き続けた。
歩き続ける中、度々ロボットが人間を埋葬する光景を目にした。
命を失った者は人間としての尊厳を与えられ、生きている僕は眠ることすら許されない。
とうとう、僕は立ち上がることが出来なくなった。
「国を救うつもりが……皆を死なせてしまった。申し訳……なかった」
残された水分は、後悔の涙となって地面に吸い込まれていった。
ロボットは僕の命が尽きるまで、ただ冷ややかに見下ろし続けた。
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