夢見るそれいゆ 253
國吉先輩の浮世離れした美しい容姿は、人を惹きつける。
それと同時に、誰もが暗黙のルールのように先輩を遠巻きに見るようになってしまう。
私もはじめは、先輩のことが近寄り難いと思っていた。もしあの頃夏越クンへ片想いしていなくても、自分から先輩に近づこうとは思わなかっただろう。
「先輩が私に告白してくれた時、私は先輩を振ってしまった。それでも、先輩は私のことを好きでいてくれた。ちなっちゃんが行方不明になって、県警の人に不快なことを言われた時には、毅然とした態度で、私を庇ってくれた。展覧会に一緒に行った時には、私のささやかな夢を『是非、叶えたいね』って、言ってくれた。それから……」
あんなに先輩への気持ちが何なのか分からないと言っていたのに、そんな時でも私はこんなに先輩のことを思っていたのだ。
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