夢見るそれいゆ 250
「あ…ありがとう。」
ママの祝福に、私は頬が熱くなった。
私はずっと何か言いたげに玄関の端で立ち尽くしているパパが気になった。
「ねぇ、パパ。さっきから様子が変だよ?言いたいことがあるなら、ちゃんと言って?」
「…夏越に、ひなが帰って来て『彼氏出来たのか〜!赤飯炊くぞ』とかデリカシーが無いこと、絶対に言うなって言われた…」
パパは頬を膨らませた。
「はぁ?それでしょげてたの?」
私はパパらしくない理由に脱力した。
「だってよ〜!夏越のやつ、『そんなこと、年頃の女の子に言ったら、パパ不潔!二度と話しかけないでって絶交宣言されるぞ』って脅すんだ。」
パパにも、娘に嫌われたくないという気持ちが働いたことに私は驚いた。
「そういえば、夏越クンは?」
玄関の三和土には、夏越くんの靴はなかった。
「ゆかりちゃんが家に来る時に、父親も同伴するって夏越に連絡があったらしくてな、動揺しながら帰っていったぞ。まだ先の話なのにな、気が早いよな」
パパが動揺している夏越クンを思い出して、ニヤニヤしている。
「……私も、國吉先輩を紹介したいんだけど。」
私は國吉先輩のこと、きちんと家族に知ってもらいたい。出来れば、夏越クンにも。
パパは仏像のように固まった。
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