夢見るそれいゆ 246
「國吉が猫を飼いたいって言い出した時は、反対はしたけど、正直嬉しかったんです。
母親を亡くしてから、はじめて自分の欲求を言ったから。
だから朔が境内に現れた時、神縁だと思い、飼うことを許したんです。」
國光さんは、朔の正体が拝殿前の桜の木の精霊だとは知る由もない。
「でも、何で『猫』だったんでしょうね。」
私は素朴な疑問を抱いた。
通常、精霊は人のかたち、多くは女性の姿をとる。
御葉様、涼見姐さん、クレハ、そして紫陽、姿に個人差はあれど皆人間の姿をしている。
精霊の姿は近くにいた人間の想念に影響を受けると、夏越クンは言っていた。
朔が國吉先輩の想念で猫の姿をとったのなら、余程猫に思い入れがあったことになる。
「…妻が猫好きで、亡くなる前日も、実家で飼っていた猫の話をしていたんです。
それをあいつは思い出したんじゃないでしょうか。」
國光さんは、朔を抱きかかえた。
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