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或る金曜日の夜

久しぶりに410字ぐらいのショートショートを書きました。

仕事が終わって、一人暮らしの自宅に帰る。
パチンと明かりをつけると、靴が散乱している。
今朝は遅刻しそうになって玄関を出るとき、それらに躓きそうになった。

冷たい水で手を洗い、寒いのでエアコンをつける。
ベッドには朝脱いだパジャマ。着替える気力もなく、そのままダイブ。
部屋が暖まるまでうたた寝をする。
疲労で強ばった身体が何とか動けるようになり、ようやく部屋着に着替える。

洗い物の溜まったシンクの洗い桶から、使う食器だけざっと洗う。
買ってきた惣菜とレンジで温め直した残りご飯を、ペットボトルのお茶と共にいただく。
食べ終わって、そのまま再びうたた寝。

意識を取り戻すと、ペットボトルや惣菜の空の容器と汚れた食器が目に入る。
何とかシンクの洗い桶まで運ぶと、洗われていない食器やタッパーが溜まっている。

洗うのが面倒だと思ったが、放置されたそれらが自分のように思えてきて涙があふれてきた。

或る金曜日の夜の話。

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