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十二月【#シロクマ文芸部】

十二月は俺の偽善心を満たす季節だ。年末に赤い勝負服を纏い、空を縦横無尽に滑走する。

「おい、獣!例のブツの準備は滞りなく進んでいるんだろうな?」
俺は赤い鼻が光る角の生えた相棒を睨みつける。

「あぁ?誰に口聞いてんだ!俺は十三代目馴鹿ルドルフ様だぞ。新米三太九郎のくせに生意気言ってんじゃねえ」
相棒ルドルフは口の悪さとは裏腹の黒ぐろとした目で俺を睨みつけてきた。

「だいたい何でお前みたいなガラの悪い人間が、こんな聖人の真似事をしてんだよ」
ルドルフはブツクサ言いながら、乱暴に色とりどりに包装された箱を白い袋に詰めていく。

「復讐さ。冬の祝祭の季節に、一人きりにした親どもへの。俺はこの時期に暗いツラしているガキが大嫌いだ。ブツをばら撒いて、ガキ共を浮かれさせるのが俺の狙いだ」
俺は不敵な笑みを浮かべた。

「そうかよ。お前みたいな理由でこの業界に踏み入れるやつは珍しいが、キッチリ仕事してもらうぜ!」
ルドルフは白い袋の口をぎゅっと締めた。

クリスマスの夜、俺は馴鹿集団を引き連れて例のブツ【プレゼント】をばら撒いてまわった。

良い夢見ろよ。目覚めたら、満面の笑みを浮かべたお前らを見るのが、俺の心を満たすんだからな。


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