紫陽花の花言葉 12
幼い頃、母に質問したことがある。
透子さんはどんな人だったのかと。
母から返ってきた答えは意外なものだった。
「あらゆる点で、敵わないお従姉様だったわ。家の立場だけではない。学校の成績も優秀、顔も整っていて、性格も穏やかだった。男女問わず、お従姉様に魅了されていたわ」
母の心底悲しそうな顔を見たのは、この時が最初で最後だったように思う。俺はそれきり母に彼女の話題をすることはなかった。
母は透子さんを嫌っていたわけではない。なのに、何故兄を嫌悪しているのだろう。俺を跡継ぎにしたいだけなら、もっと穏便に済ませることが出来たはずだ。誰にも聞くことが出来ず、今まで過ごしてきてしまった。
父は理由を知っているのだろうか。家族に対して、ほとんど関心を寄せなかった父が知っているとも思えないのだが。
だけど、父の命が尽きてしまう前にどうしても聞いておきたい。兄と一緒なら、何か話してくれるかもしれない。
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