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半分ろうそく【毎週ショートショートnote】

私は気づくと冥い場所にいた。あれだけ強く地面に叩きつけられたのに、体の痛みはまったく無い。

「おかえりなさい。ここは冥界、魂の還る場所。」
角の生えた女性が、私に話しかけてきた。

「私はやはり死んだのですね」

「ええ。ただ、あなたの場合、不具合で半分命のろうそくが残っています。人生をやり直す権利があなたにはあります」
角の生えた女性が営業スマイルを浮かべた。

「人生を変えられるってこと?」
私は女性に詰め寄った。

「いいえ、ここに戻る前の人生を繰り返すことになります。それでもろうそくが余っていたら人生の続きを送ることが可能になるのです」

「あんな人生、もう一度送るなんて真っ平です。天国でも地獄でも連れていってください」
私は権利を放棄することにした。

「あなたは命をまっとうしていないので、天国にも地獄にもいけません」

私は冥界の、命のろうそくを作る工場で働くことになった。
私みたいに不具合をおこす人が現れないように願いながら──

久しぶりに毎週ショートショートnoteに投稿しました。
こちらのショートショートの番外編になっています。


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さくらゆき
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