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hydrangea ─dream─ 前編

「紫陽花の季節」の夏越の恋人「紫陽」の生まれ変わり「ゆかり」の物語、第3弾です。

日本にいるナゴシから電話が掛かってきた。
ナゴシは、私の前世からの恋人だ。

「ゆかり。今電話大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。」
【ゆかり】は私の名前なのだけど、ナゴシにその名前で呼ばれるのにはまだ慣れない。

「…ねえ、ナゴシ。紫陽しようって呼んで。」
私は彼が名付けてくれた【紫陽】という名前が気に入っている。生まれ変わる時も、名前を持って行きたかった。

「…紫陽。」
ナゴシの、私の名前を呼ぶ声に熱を感じる。

「うん。ナゴシにそう呼ばれるの、すごく好き。2人きりの時はそっちで呼んで…」
懐かしい響きに、胸の奥が温かくなった。

「…紫陽に【ナゴシ】ってまた呼んでもらえるの、夢を見ているみたいだ。」
私は彼を15年も待たせてしまった。彼がそう思うのも仕方がない。

「夢じゃないよ。今は離れているけど、9月からは私、日本に住むんだよ。一緒にいられるよ!」

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