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コラボレーション作品

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#アクアクルーズ

【コラボ小説】ただよふ 4(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 4(「澪標」より)

僕が自分の部屋で鞄の整理をしていた時のこと。
「…あった!」
取引先から「ご家族とどうぞ。」といただいた高級中華料理店の割引券を財布から取り出した。

いつもなら、すぐに捨ててしまう類いのもの。
妻が周りに気を遣ってしまうので、一緒に「そういう場所」には行くことがなくなってしまったから。

何か大きな仕事を成し遂げたら、あなたを食事に誘おう。
僕はその日が来るのを楽しみに、割引券を再び財布に忍ばせ

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【コラボ小説】ただよふ 3(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 3(「澪標」より)

入社して2ヶ月が経った頃。

妻は東京の生活に慣れてきたのか、沈み込むことが少なくなっていた。
先日は同窓会に出席出来たと喜んでいた。

航平の方は、思春期だからか言葉少なになっていた。
受験生なのに大阪から東京に越してきたことを、息子はどう思っていたのだろう。

航平の誕生日の少し前。
学校から帰ってきた航平の制服のボタンが取れかかっていた。

「航平、ボタンが取れそうだ。
付け直すから貸しなさ

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【コラボ小説】ただよふ  1(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 1(「澪標」より)

4年前の春。
あなたと出会った日は、妻の具合が良くなくて、機嫌がすこぶる悪かった。
僕が志津と2人で食事に行く予定だったのを、「何で大学の男友達との食事が、3ツ星ホテルの最上階のバーなのよ!如何わしい!」と変に勘ぐられ、僕は妻を宥めてから家を出た。

体育会系な志津とお洒落なバーは確かに似つかわしくないと僕も思ったが、大学時代の思い出話だけでなく、新しい職場での仕事について話すには、落ち着いた場所

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