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2022年9月の記事一覧

【コラボ小説】ただよふ 24 最終回(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 24 最終回(「澪標」より)

妻の強迫性障害の治療は、苦難の連続だった。治ったと思っても、再発するの繰り返しで、妻も僕も何度も心が折れそうになった。

治療期間中、息子が大学に現役合格したことが、妻の治療の意欲を上げてくれた。

強迫性障害の仲間も出来て、情報を交換したり、悩みを共有することで、病を家族だけで抱えなくて良くなった。

時間はかかったけれど、担当医から寛解と診断された時は、家族だけでなく、強迫の治療で知り合った仲

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【コラボ小説】ただよふ 23(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 23(「澪標」より)

妻の呼吸が荒くなってきた。暑さのせいだけではない。今まで強迫の症状を我慢していたのだ。

「実咲さん、もう帰ろう!」

「航くん、まだ話は終わってないわ!!」

妻は帰宅を強く拒んだ。僕は妻の話の続きを聞くことにした。

「──コロナ禍になって、彼と逢う回数は減っていった。はじめは、すぐに終息すると楽観していたわ。だけど、芸能人から死者が出たり、新規感染者のニュースを見ているうちに、ウイルスに感染

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【コラボ小説】ただよふ 22(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 22(「澪標」より)

妻が退院してからの治療方針を聞くため、僕と妻は診察室にいた。

「今後なのですが、しばらく薬物治療で様子をみようか、強迫性障害の治療に入るか、予め奥様の意向を聴いていたのですが…強迫性障害の治療に移らせてもらっても宜しいでしょうか?」
主治医が僕に同意を求めた。

僕は強迫性障害のことについて、本で読んだり、ネット検索して調べていたが、その治療法は妻が耐えられるか疑問に思うようなものだった。

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【コラボ小説】ただよふ 21(「澪標」より)

【コラボ小説】ただよふ 21(「澪標」より)

僕と同じ日に出社していた志津に、あなたの異動の詳細を聞かされた。

「北関東事業所の水沢が退職して、向こうの人員が足らなくなったので、本社から1人北関東に寄越してほしいと頼まれてな。ちょうど鈴木が北関東で働きたいと異動願いを提出していたので、そのまま異動してもらったんだ」

あなたと別れたあと、Zoomミーティングで何度か顔を見ていたが、僕は内心気まずくなってしまっていた。それは、あなたも同じだっ

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