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おやすみ、わたしちゃん。
わたし、母にうらみをもってます。
おだやかじゃ ありません。
どんなことを うらんでいるか、ここに書いちゃいますね。どれも、ちいさなことばかり。
けれど、わたしにとっては 大切なことなのです。
いきますよ~
エヘン!(せきばらい ひとつ)
・ならいごと、やめさせられた(引越のため)
・説明なく、ピアノの先生かえられた
(私が うまくならないから、だって!)
・制服の採寸、ひとりで行かされた
(お歳暮送るあいさに ほれ、あんたひとり
さっと、行っといない! だって)
・にわとりにまで 育ったひよこ、食べられた!
・母の日に買ったエプロン、投げつけられた。
・修学旅行のお土産のブローチ、投げられた。
(どちらも、趣味に合わなかった)
しかも、母はどれも おぼえていなくて。
わたしの〈つくりばなし〉だ、なんて 言っている。
修学旅行のブローチも、弟が買ってプレゼントしたことになっている。大切に、たんすの奥にしまっているから、もう、びっくり~。
わたしが買ったというと、嘘だっていいかえす。
嘘じゃないと怒ると、うそじゃなくても〈つくりばなし〉なんだって。作家にでもなるんかって、笑ってくる。
くーっ。
わたしにだって、ちゃんと〈しょうこ〉は あるんです。夏じゅう、にわとりのピーちゃんにキャベツを刻んで、運んだ絵日記。てのひらにしみついた、キャベツの匂いもおぼえてる。
だいすきな水炊きを、その日だけ食べなかったことも…(食べたか? 食べたかも… だって、水炊きおいしいんだもん、言い切れない…)
ああ、わたしの記憶がどんどん不確かになっていく。あやふやに、ぐずぐずに、にじんでいく。
もうほんと、いやになる。
だってね、恨みをもちつづけるのは、しんどいよ。
重くて おもたい、砂袋ひきずって 歩くみたいな感じなんです。だから もう、砂袋に 穴があいて、砂がこぼれていっても 繕わないって、決めたんです。
砂がこぼれたら、立ちどまればいいんじゃない?
って、気づいたの。
あれは体に毒だよって、食べさせてもらえなかった お子さまランチの旗 ひとつ、ぽんと。こぼれた砂の山に おいてね。
また、わたしの続きを 歩いていけばいい。
わたし、わたしの母になるんです。
父にもなるんです。
そしてね、わたしをそだてて、まもって、話して生きていく。
ただの人なら、あんなにおもしろい人、ほかにはいない おかあさん。
あのひとと一緒につくった夏休みの工作、〈くまのクーちゃん〉のことだって、これからは 最高の思い出に かわっていくかもしれないよ?
ぬいぐるみじゃなく、枕になったクーちゃん。
すごく変な顔だったけど、小学生のあいだ、ずっといっしょだった。
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おやすみ、わたしちゃん。
わたしがそばにいるから。
今夜は ゆっくり過ごそう。
枕になった〈クーちゃん〉と 話したみたいに、つまらないこといっぱい話して。こんどは泣くんじゃなくて。
夢の中で、笑おう。