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108 子供(どっちの?)

赤ちゃんがワタシの手の中に居る

お母さん「よく頑張ったわね!
さくら、男の子よ?」
お父さんは見た事が無いニコニコした顔でふにゃふにゃの手を触っていた

伊織さんのお母さんも嬉しそうに泣いていた

伊織さんも……泣いている

昔は産婦人科では赤ちゃんの血液型を親に教えるのだが

現代は親に言わないようにしているようだった
何故かは皆様お分かりだろう

ワタシは渡辺先生の所で産んだ
渡辺先生は龍星のお友達である

先生は龍星に聞いているのか
何もかも知っているかのように

渡辺先生「誰に似るんでしょうね」
…とニッコリ笑っていた

家族が一旦帰ってから伊織さんだけになった
伊織「さくらちゃん…俺嬉しい…」
ワタシ「赤ちゃん可愛いね」

その時龍星が来た
伊織さんは怪訝そうな顔をしている

龍星は

とても嬉しそうだった

ワタシは分からない
どちらの子供かも分からないのに
何でそんな普通にしていられるのか

伊織「龍星…。」

伊織さんはこれ以上の言葉を発さなかった

ワタシは産んだばかりでまだ下の方が痛い

産婦人科では産んだ次の日から
1週間3時間ごとに起きて赤ちゃんにお乳をあげなければならない

体もボロボロで凄くしんどかったのを覚えている
他の女の子達もそうで不安そうだった

そして退院

あらゆる赤ちゃんグッズが揃えてある
ワタシ「可愛い…」
伊織「ちっちゃいなぁ!この服可愛い!」

伊織さんは本当に何も言わない

ワタシ「…パパ?」

伊織さんはびっくりしていた

ハニカミながら
伊織「さくらちゃん、ママだね」
…と嬉しそうに言っていた

ワタシはこの子がどちらの子であろうと幸せに育てる事を決めた

その後がまたしんどい日々が続く

3時間おきの授乳

フラフラで全くご飯が食べれず
痩せていく日々

伊織「さくらちゃん!ちょっとは食べないと。栄養がいかないんじゃない?」

ワタシ「食欲が全く無い泣」

伊織さんはちょこちょこ店に行く為
ワタシは夜中1人だ

皆、お母さん達は頑張って育ててるんやね。ワタシもへこたれないようにしないと

でも、食べても吐いてしまう

ピンポンピンポンピンポン

えっダレ?

画面には龍星が

ワタシは動揺しながら家に入れた

龍星は「伊織経由で聞いたけど
ご飯食べれないんやって?」
ワタシ「…うん」

龍星「色々、女の子見てきたけど別に絶対お乳って訳じゃないみたいやで。
ミルクでいいやん。今の時代はミルクでも栄養価あるらしいよ」

そう言ってミルク用品を出して
お湯沸かして慣れた手つきでミルクを作ってくれる

ワタシ「龍星…慣れてる」

龍星は笑う
「スカウトマンは子供がいる風俗嬢も沢山いるから笑
子守りもさせられるんだよ」

ワタシは龍星に習ってやってみる

めちゃくちゃごくごく飲んでくれて泣きそうだった

赤ちゃんは眠そうでまた泣きそう

龍星は抱っこをする

ピタッと止む

ワタシ「すっ凄い!!」

龍星は  普通に  

俺、幸せ

と言った

ワタシは黙る
龍星は関係なしにオムツ替えとかしてくれて有難かった

もう少ししたら伊織さんが帰ってくる

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