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長い病院の待ち時間…何とかして。【名医取材記#16】

「もう少し患者の話を聞いてほしい」

『国民のための名医ランキング』編集部です。いつも取材記を読んで頂きありがとうございます。今回は、病院の「待ち時間」と「診察時間」について、患者側の不満と病院側の切実な事情についてのお話です。
皆さんご存知の通り、病院はどこも非常に混んでいます。大病院はもちろん、人気があるクリニックも激混みです。多くの病院は、予約制ではありますが、なかなか時間通りに順番は回ってきません。編集部が経験したのは、予約制にも関わらずなんと「4時間待ち!」というのがありました。受付の対応もそっけなく、いつ呼ばれるか分からず、ただ悶々とするばかりでした。これは極端な例だと思いますが、患者側からすると「予約しているのに何で?」ということは多くあります。
問題はその待ち時間に対して、診察時間はあっという間に終わり、患者側の満足感が得られないことだと思います。「これだけ待ったのだから、もう少し患者の話を聞いてほしい、丁寧に診察してほしい」というのが患者の正直な気持ちだと思います。

日本の「国民皆保険制度」がいかに素晴らしいかを知る

さて、その上でいくら文句を言っても、簡単には改善できない病院側の事情があることは患者側も理解しなければなりません。
まず、大前提として日本は「国民皆保険制度」という素晴らしい制度を採用しています。基本的には自分で病院を選べて、なおかつ医療費は保険によって自己負担額は1割〜3割となります。高額療養費制度もあり、国民は高度な医療サービスを公平に受けることができます。
これは当たり前のように思えますが諸外国ではそう簡単にはいきません。国によっては、まず地域のかかりつけ医を受診して、必要に応じて専門病院や大学病院に紹介される仕組みを取っています。希望する専門医に診てもらうまで非常に時間がかかる場合があります。または、民間保険に自分で加入しなければならず、低所得者は「無保険」の状態にならざるを得ない国もあります。
今、日本は超高齢化社会になり「国民皆保険制度」を維持するために、制度改革や財源確保が課題となっています。しかし、この世界に誇る制度をなんとしても継続し、さらに充実したものすべきでしょう。病院や医師に不満があるとしても、まずはこの恵まれた状況にあることを知った上での話になるかと思います。
とは言っても、日本の医療にはたしかに多くの改善点があります。今回のテーマである「待ち時間の長さ」について、鳥取大学医学部附属病院では次のような理由を挙げていますので引用させて頂きます。

大学病院はなぜいつも待たされるの!?

まず言えるのは、患者数の多さ。例えば、とりだい病院の予約患者数は1日平均1500人。初診・再診あわせてこの数だ。都市部の病院ともなれば、倍近い予約数のところもある。当然のことながら、大学病院にかかる方は重症度や緊急度の高い患者さんも多い。「大学病院で詳しく診てもらいましょう」と他の病院から紹介されて受診するのだから1人あたりにかける診察、治療時間も自ずと長くなる。また、入院患者さんや救急搬送される患者さんもいる。大学病院の医師はその場に赴かずとも処置の相談を受けることもある。診察だけでなく、その前後に受けるさまざまな検査でも待ち時間が生じる。医師は、患者さんの症状や病態に応じて検査内容を決める。そのオーダーに従って検査技師が必要な検査をする。レントゲン撮影にしても、1枚撮って「はい、終わりました」ではない。他の医療機関では見つからなかった病気や難しい治療をするための精密な検査が必要だからだ。検査結果は、画像処理や診断、分析、誤りがないかなど、綿密なチェックを経て医師の元に届けられる。だからどうしても時間がかかるのだ。

鳥取大学医学部附属病院 広報誌「大学病院の謎 第2回 待ち時間が長い理由」

混雑を解消する様々な取り組み

しかし、こうした激混み状態を病院も解消しようと様々な対応をしていることを知ってほしいと思います。例えば、便利なシステムとして、離れた場所にいても自分の診察時間が近づいたこと知らせてくれるサービスがあります。スマホアプリやメールアドレスを登録することで、院内のカフェやコンビニにいてもメッセージを受けとることができます。また、自分の順番がおおよそわかるモニターもあれば、イライラも少しは解消できます。待ち時間の暇つぶしにはなんといってもスマホですが、クリニック等ではWi-Fi設備があるところが増え、こうした試みも患者としては助かります。
その他、病院では患者が見えないところで、予約や会計システムの効率化などを図っています。根本的には、患者の集中と人材不足ではあると思いますが、病院でも「できることは実行し改善している」ことを患者側も理解すべきではないでしょうか。

診察時間は本当に短いか?

「待ち時間の長さ」は患者のストレスではありますが、もう一つの側面として「診察時間の短さ」があります。「3時間待ちの3分診療」といわれますが、もう少し「患者の話を聞いてほしい」という不満があるかと思います。確かに皆さんも「医師の説明が足らない」「患者の話を聞いてくれない」「医師はパソコンに打ち込むだけで顔も見てくれない」「冷たくそっけない対応された」などいろいろあるかと思います。これらの不満と「待ち時間の長さ」が相まって精神的、肉体的なストレスが溜まって「なんのために病院に通っているのか!?」となります。
しかし、『国民のための名医ランキング』の取材で医師や患者の話をよく聞くと、問題は「診察時間の短さ」ではなく、「診察の的確さ」と「患者側の満足感」ではないかと思います。日本の場合は医師と患者はまだまだ上下関係で、患者は率直に医師へ質問することを遠慮しています。欧米のように納得いくまでディスカッションする文化ではありません。基本的には「患者は我慢している」ことを医師や病院関係者も理解して頂きたいと思います。

行政主導のによるシステム改革が必要

一方で、医師や病院の事情を理解し、患者も協力する気持ちであってほしいというのが医療関係者の正直な思いでしょう。先ほど説明したように日本は「国民皆保険制度」によって諸外国と比べて安い医療費で、高度な医療を納得いくまで受けることが可能です。現在の大病院は患者が集中して、圧倒的にキャパオーバーの状態です。「3分診療」といわれますが、医師は限られた時間の中で可能な限りの診療をしており、「医療行為として」決して短いとはいえない場合もあるかと思います。保険ではなく自由診療であれば、患者を制限して一人一人の診察に時間をかけることが可能です。その代わりに医療費は自己負担となり高額になります。それも検討すべき時代になっていますが、よほどお金に余裕がある方を除けば、自由診療は続きません。

日々激務をこなす医療関係者の待遇改善が社会問題となっています。「長い待ち時間」と「短い診察時間」の解消は、医師・病院側の改善と患者側の理解、双方が必要不可欠です。また、大学や民間企業の努力だけでは不可能です。国家の根幹をなす医療サービスのシステム改革は行政主導による強力なリーダーシップが必要ではないでしょうか。

『国民のための名医ランキング』は日本全国どこでも、より高度な医療が提供されることを切に願ってより国民全員(医師も含めて)のためになる情報を掲載しています。皆さまがより良い方向に進むことを心よりお祈りいたします。
全国の名医を探す取材は続きます!