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本の紹介「フルーツバスケット/高屋奈月」

かなり前の漫画ですが、最近アニメがリメイクされたので、原作もアニメもオススメです。


子供の頃に読んだのと、大人になってからアニメで見ると感じ方が違って一回で二度美味しい作品です。
大人になってから、一番感情移入出来たのが草摩慊人(そうまあきと)でした。

草摩慊人とは。
草摩家の当主。権力と暴力で草摩の人間を縛りつけることも厭わない。十二支の呪いで結ばれた“絆”を拠り所としている。

子供の頃、嫌いなキャラだったんですよ。
身内=自分の支配物として扱って好き勝手やってる子にしか見えなくて。

それが、大人になってから嫌いどころか、「分かる分かる!」となるから不思議なものです。
慊人は、毒親育ちなんですね。

1.慊人の両親
母が特に毒要素強めで、娘の慊人に自分の夫を取られたように感じて辛辣に当られるのですが、父もある意味毒親なのかなー、と。
「君は皆から愛される為に言われてきたんだよ」とか言っちゃうんですけど、全員から愛される存在なんて無いわけで。
そして、この台詞も含めて慊人の母が余計に気に食わない! となり、慊人にキツく接するようになるのですね。

2.リンとはーくん

リンこと依鈴とはーくんこと潑春の件でも、慊人がぐっちゃぐちゃなことをします。
二人は恋人になるのですが、身内=自分の所有物を思っているので面白くないわけです。
それで、慊人が「どっちから手を出したの?」的なことを聞くのですが、これは「どっちが僕に詰められる?」と聞いてるわけですね。
※慊人は、母からの嫉妬により男性として育てられているので名前も外見も男性らしく、一人称も僕です
そこで、はーくんを庇ったリンが「私から手を出した!」的なことを言うのですが、慊人はそもそも最初からリンを詰るつもりだったと思うのですよ。
だって、慊人が周りにこんなに酷い対応をするのは母から酷い扱いを受けてきたからなわけで、慊人の中で女性=母、又は母と同じくらい醜いもの、という構図が出来上がっているわけです。
ブチギレた慊人は、リンを窓から突き落としてしまいます。
で、やっぱこういうのを見ると、「慊人、無いわー」って思うんですけど、大人になった今だと、「自分の世界を守るのに必死だった。暴力を行使してでも周りの人達を繋ぎ止めておきたかった」という見方が出来るようになるんですね。

3.慊人と紅野

慊人が身内を支配出来ていた理由に、作品内で「呪い」というものがあるからなのですが、紅野はかなり早い段階でこの呪いは解けてしまいます。
取り乱して、僕を置いていかないでと泣く慊人に、紅野はずっとこの子のそばにいよう、と決めます。
そこからは、慊人がどんな暴挙に出ようがその行為を肯定はしないものの否定はしません。
これは、ある意味優しくは有るのですが、真の意味で優しいのか? と、問われると疑問です。
誰かが道を間違えそうなとき、間違えている最中に、正すことをしないのが紅野の優しさです。
ですが、これが真っ当な親ならば、子供がよろしくないことをすれば注意をしたり叱ったり、それを何故行ってはいけないのか諭すわけです。
紅野も、主人公の透くんと関わることで、リンとはーくんの一件以降、幽閉されていたリンを助け、慊人には「あんなことをしてはいけない」と注意出来るようになります。
ただ、今まで散々優しく、というよりも甘やかしてきた紅野は慊人から、「その中途半端な優しさが僕を傷付けたんだ」と言われて刺されてしまいます。
このシーンも子供の頃は、「こいつ、我儘すぎないか!?」と思いましたが、大人になると凄く共感出来るのですよ。
優しさと甘さって紙一重というか、似て非なるものなわけです。

4.慊人と紫呉

紫呉はずっと慊人のことが好きでいるのですが、愛情が枯渇している慊人は身内のありとあらゆる男性陣から愛情を求めている状態です。
それこそ、紅野と寝ちゃったり。
紫呉は紫呉で、慊人への仕返しというか、要はかまってほしかったんでしょうね。
慊人の母と寝ちゃうんですよ。
当然、慊人の耳にも入ります。
怒った慊人は、「この家から出て行け!」と言い、紫呉はあっさり家を出て行くのですが、慊人からしたら、「何で出て行くの!? 僕を置いていかないで! これは本心ではないのだから!」という冗談なわけで。
慊人のこういう、本心と真逆なことを言って相手を試す行為が愛着障害に見えて仕方無かったです。
愛着障害のひとつに、「試し行為」というのがあって、慊人は紫呉に限らず、他の身内にもどれだけ酷いことをしても離れないでいてくれるだろうか? と、思っていたのではないでしょうか。
事実、紅野に「僕が辛辣な態度なのは本心ではないよ」と悪ぶるように言っています。
終盤で、紫呉は親の愛情を必要としていないと言うシーンがあったり、慊人への対応を見る限り、慊人と紫呉って似たもの同士なのではないかな、と。
自分だけが損をする役回りはごめんだ、かまってほしい、余所見するな、自分を見てくれるのなら手段は選ばない、こういうところが似ているんですよね。

5.最後に
登場人物の感情が生々しく伝わってくる作品でした。
メンタル系の病気を抱えている方に刺さる作品だとおもいます。
そうでない方でも、可愛い子や美人さん、イケメンが沢山出てくるので楽しめると思います。
アニメ版は旧作リメイクがあり、私はリメイク版しか見ていないのですが声優さんもとても豪華でオススメです!

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