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【小説】魔王が甘いから私がやる。[#009]


前回までのお話


#009 : 再戦

「はぁ…はぁ…はぁ………やっと…やっと着いた…。」
大怪我をしたエスト様を背負った私はドラゴンの居る広間に到着した。

「ドラゴンッ!ドラゴンッ!聞こえる?ドラゴンッ!」
息を整えるのもあとに精一杯の声を張り上げて叫んだ。



—— 遠くから声が聞こえる。

「…また貴様か!鬼の娘ーッ!またしても命乞いをする事になるぞーーーーーッ!」

ドラゴンが叫びながら飛んできた。

ズシンッ………

ドラゴンが私の目の前に着地した。
地面が激しく揺れる。

「くっ………」
私は揺れる地面に手をついた。
だが、悲しいことに私の胸は揺れない。「なんて残酷な世界…」と心の中でつぶやく。

「…エスト様が!魔王様が…大怪我をしてしまったのです!…助ける方法はありませんか?教えてくれませんか?」

すがるような声でドラゴンに助けを求めた。
声が震えているのは、怖いからではなく、エスト様を背負っているからだと自分に言い聞かせる。

「うん…?…ふはははははッ!鬼の娘よ!なぜ我がお前達の手助けをするのだ?」

ドラゴンは失笑した。当然だ。
それでも私は話しを続ける。

「勝手なことを言っているのは分かっています…!でも!でも!私にはこの方が全てなのです!どんなことをしてでも治し方を教えてもらいます!」

「……ふはは…我も長い間のこの生活に飽いていたところだ。…ちょうど刺激が欲しかったところよ!よかろう!鬼の娘よ!教えてやろう!……

ドラゴンが大きな翼を広げると、凄まじい殺気が私を襲った。

「くっ…」

私は覚悟を決め、キッとドラゴンを睨みつける。

「やはりそうなりますか…でもね…?…ふふふ…今回はエスト様が見ていない……私も本気を出します……………よッと!光魔法!」(バレないように小声)

私はドラゴンにいきなり攻撃を仕掛けた!
右手を高く掲げ、魔力を集中させる。手のひらから眩い光が放射され始める。

ピカッ!!!!!

激しい閃光がドラゴンの視界を奪う。広間全体が一瞬にして真っ白に包まれる。

「な!?光魔法?バ!バカな!」
ドラゴンは両目を覆い、首を激しく振る。
その巨大な体が不安定に揺れている。

「奇襲大好き☆ 先手必勝の目くらましよ!」
フラッシュの余韻で、私の周りがキラキラと輝いているように見える。

「しまった…!油断した…!」
ドラゴンは完全に不意を突かれ、慌てている。

「からのー!!!!!ライトアロー連打!!!!!」

光魔法での追撃!!
指先から無数の光の矢が放たれる。
それぞれの矢は、まるで意志を持っているかのように、ドラゴンに向かって飛んでいく。

スドドドドド!!!!!

無数の光の矢がドラゴンに襲いかかった!
ドラゴンの鱗に当たるたびに、小さな爆発を起こす。

「ぐッくっ…!」
ドラゴンは怯んでいる。
その巨体が後ずさりし、壁に背中をぶつける。

その瞬間を私は見逃さなかった!

「ぶぁーかぁーめええええーーーーー!www 怯みおったなあああああーーー!www」

補足しておくと、私は相手の弱みを見つけると全力でそこを叩きに行く性格である。

地面を思い切り蹴り、ドラゴンに向かって猛ダッシュする!
すかさずドラゴンの足を掴み…

「…スキル 怪力 全開ッ…せーーーーーのッ!

怯んでいるドラゴンの片足を掴み、高速で回転しながら地面に叩きつけた!

ぐるんッ!!! ドガッ!!!!!

「ぐはぁッ…!」
ドラゴンは地面にめりこんだ。

「本物のドラゴンにドラゴン・スクリューをキメたったわー!異世界広しと言えども私が世界初なんじゃないのー!?ふはーはー!これがホントのドラゴン・スクリューだぜぇーーーーー?」



そして地面にめりこんでいるドラゴンの眼に刀を向けドラゴンを見下ろすと、憧れの最高に厨二っぽい言葉をドラゴンに放った。

「あはは!ドラゴンさん…チェック!メイちょ…ぁ……ょ…」

「まさか…ここで…最高の見せ場で…噛んだ…?」

「……ふ…ふふふ…戦う私は…美しい……。」
「ご、誤魔化した!?ぐぅぅ…なんという心の強さだ…。」

「おいおいおいーおぃいー?どぅしたぁー?もう終わりなのかぁー?くはは…げははははは!ぶひーぶひーぶひー!」

「ヒロインの笑い方ではないな…くっ…まさか光魔法だと…?……鬼が勇者…なのか…?なぜ魔王と一緒にいる?」

「ぶひー?まだ続けるのかな?かな?かなーッ?かなーかなッ かなッ かなかなかなーッ!www」

「…そしてサイコパスなのかな…怖すぎる…」

「色々あってね……私は勇者ってやつみたいね。…私はこの方が大好きなのよ。…妹みたいなものだと想っているのよ。だから全力で守る。だから一緒にいるのよ。」

「……良いだろう。我の負けだ。魔王の怪我の治し方を教えてやる。」

「あ!それから配下になりなさい。」

「は…ぃ?」

「配下になれと言ってるのよーッ!」

私は刀をドラゴンの眼の前でぶんぶん振り回した。刀の風切り音がピュンピュン!と鳴り響く。

「…ちょッ! 刀…危なッ!?」

「……ふははははは!面白い!気に入った!勇者と魔王が一緒にいるだと!? さらにはこの竜王も従える?これは非常に興味深い。とても面白い事になりそうだ!良いだろう!魔王の配下になってやるわ。」

「いやいやいや…バカなの?エスト様の配下じゃなくて、わたしよ。わ・た・し。」

「ん……ぁ…?」

ドラゴンは考え込んでいる。

「私に負けたのだから、お前は私の下だろうが!弱肉強食だろ?舐めんなトカゲ!おいコラ!トカゲーッ!」

地団駄を踏みながら刀をドラゴンの眼の前でめちゃくちゃに振り回した。刀の風切り音がピュピュピュン!と鳴り響く。

「刀…危なッ…ちょ…眼はやめてください!!」

「おいどうなんだよトカゲ!」

「…あれ……?この人…前回… 靴を舐めて謝ろうと思いましたが靴を履いてないから爪でも良いですか! って泣きながら命乞いした人ですよね…?マウントを取るとこんなに変わるのか…?」

「おい聞いてるのか!トカゲ!」

「わ、わかりました…」

「よし。よろしい。あ、言っとくけど、私が勇者だとエスト様に喋ったら…お前の尻尾が何回まで再生できるのか確認するからな?楽しみだな!?」

「は、はい……」

「よし。私の名前はサクラよ。これからよろしく。」

私はニッコリ微笑むと刀を収めた。

「はい…。」
「お前の名前は?」

地面にめりこんでいたドラゴンが起き上がりながら言った。

「リンドヴルム です。」

「…は?もう でいいな?な?辰夫?」

「えぇ…。」

そんなこんなでドラゴン(竜王)の辰夫を配下に従えた。

—— その時である。

(テレレレッテッテッテー♪)

(サクラのレベルが 205 に上がりました。)

(サクラは スキル:格闘 を習得しました。)

(サクラは スキル:刀技 を習得しました。)

(サクラは 称号: 竜王を従えし者 を習得しました。)

 (サクラは エクストラスキル: 光の加護 を習得しました。)

(スキル 怪力 の熟練度が一定に達したため、スキル 肉体強化 が派生しました。)

(あっ!?うはwwwマジ?wwwプークスクスwww)

(スキル 体温調節 のレベルが最大に達しましたwww 体温調節 の進化が可能ですwww実行しますかwww)

(引き続き スキル 冬眠 も進化が可能ですけどwww実行しますかwww)

「しねーよ!おい!天の声の中の人!出てこい!こっち来い!」

やたらと煽ってくる天の声にツッコミを入れている私を見つめながら辰夫は怯えていた。

「そんな事より辰夫!エスト様の怪我の治し方を教えなさい。魔王に光の回復魔法はダメなの?」

「は!はい!…そうですね。光の回復魔法は魔人族の魔王には効きません。我のダークブレスが良いかと。」

「なるほどね。やはりそんな感じなのね。では辰夫!最初の命令よ!ダークブレスをエスト様に。」

「はい。」

フォオオオオオ……

辰夫はダークブレスをエスト様に吹きかけた。

エスト様の怪我がダークブレスを吸い込んで傷が癒えていく。

『ぅ…ん…むにゃむにゃ…』
「良かった…。これで一安心ね。」
「そうですね。じきに目を覚ますかと。」

ホッと一安心した私はその場に座り込んだ。

「はぁ…疲れた…ぁ……」

—— こうして、前代未聞の のパーティーが誕生したのである。


(つづく)

※次回!エスト様が復活!?そしてダンジョンの攻略開始ッ!?


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