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ひがし茶屋街の出会い



 皆さんはひがし茶屋街に行ったことがあるだろうか。歴史ある街並みの風情が心を落ち着かせてくれる。情緒豊かな街である。金沢の観光地として有名だが、金沢に暮らす人はぜひ一度訪れてみてほしい。人は多いが、ゆったりできるお茶屋さんも多く、休憩しながら街歩きができるだろう。

 その日のひがし茶屋街は、平日ということもあり、人は少なかった。最近の情勢もあるかもしれない。感染症が暗い影を落としている情勢を思い、少し物悲しくなった。

 そうこうしている間に一通り街を歩いた私は、歩き疲れて、ふと立ち止まった。どこか休憩できるカフェはないかと探して回って、”黒猫”が目に止まった。正確には、黒猫のイラストが描かれた暖簾だ。「カフェくろねこ」の文字を見つけ私は心の中で飛び上がった。

「休憩できるところを探していたし、ちょうどいい」 

 カフェくろねこと言いつつ、黒猫がそこにいるわけではなかった。いかついおじさんが接客に出てきたので、身構えた。入ってみると、古民家風の造りで味のある風情。私はこの落ち着いた雰囲気がすごく好みだった。アイスと抹茶ラテを頂いた私は、満足してカフェを出た。いかついおじさんが「また来てくださいね」と笑顔で送ってくれた。

 カフェくろねこを出て、道を歩いていると、驚くことに、黒猫が横切った。今度は正真正銘の黒猫である。艶のある上品な黒猫というよりは、でっぷりとしたもふもふの黒猫であった。きつねにつままれたならぬ、黒猫につままれた気分である。黒猫が横切ると不吉なことが起こるという迷信がある。けれども、あくまで迷信は迷信であって、事実ではない。猫は幸運を呼んでくる。カフェくろねこという出会いを呼んでくれた黒猫に感謝して、その場を後にした。


 



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