切なくて詩を書いた

未推敲で、ある合評会に出した詩です。

「完」                  
 
何も持っていきません
全部残していきます
悔いはあります
 
残してあげられなかった
私が子どものころの海
松林に続く白い浜
素潜りして手づかみで魚を取った海を
 
残してあげられなかった
私が子どものころの秋の雁行の空 
北極星北斗七星天の川 
屋根の上に見た夜空を
 
残してあげられなかった
私が子どものころメダカをすくって遊んだ
川底の砂の光る小川
岸辺のすみれたんぽぽ
玉虫を追いかけて上った丘
花で冠を作った一面れんげの春のたんぼを
 
私は残せなかった
おとぎ話や水戸黄門漫遊記のように
めでたしめでたし
「完」
と終わる物語を

 
 近頃幼少時を想う日々が増え、懐旧の思い耐えがたく、言葉にして心を安らえようとしたのです。その会のメンバーは皆さん辛口で、もう一人作品を出した方など散々の言われよう。初参加の人はびっくりしていらっしゃいました。私もお二人の人から根拠のない批判を受けましたが、まったくの的外れの指摘なので聞き流すことができました。批評というのは、その人自身の力量を明確に表すので、安易にできるものではありません。他の方々からは有益なアドヴァイスを頂き、ありがたかったです。でも、アドヴァイス通りに書き換える気持ちはありません。古いタイプの詩なので、残すつもりはないからです。ただ、終活中の者の気もちを十全には言い当てていないので、自分が満足するまではいじることになるでしょう。