つらつらcafe 第17回 15年ぶりの…
15年ぶりに私は主人とその場所に立っていた。
もちろん、今まで決して自分からは来るはずはなかった場所。
そう、大大大嫌いな自動車教習所だ。
30代前半で就職のためにパニック状態になりながら普通免許証をとってから、15年間一度も運転していない。
しかし、2年前に主人と結婚して、軽自動車を買うと様相は劇的に変化した。
主人は1000ccのバイクを愛しつつ、軽自動車も乗りこなす運転超大好き人間で、私が免許証を持っているのに運転しないことをずっと心配していた。
かつ、私は本も珈琲も自宅で楽しむインドア派なので、
「運転できれば世界が広がるよ。」
と常に運転を心から楽しむ主人に言われていると、なにやらこんな私でも、アウトドアもいいかも、買い物や図書館、ずっと行きたかったカフェなどにも自分でいけたらと考え始めてしまい、
なんと、先日自分から安さで選んだ教習所の2コマ90分のペーパードライバー教習に申し込んで、本当にきてしまった。
まずはこれから運転可能かどうか判断してもらうだけなのだが、どうなることやらと暗くなる。
かつて鬼のように怖い教官に怒鳴られながらパニック状態で運転を覚えた記憶が蘇り、ドキドキとしながら教官を待っていたら、
「こんにちは、くまさんですね。よろしくお願いします。」
大柄だがニコニコした可愛らしい笑顔のおじさんが歩いてきた。
あれ?
こんな感じだっけ。
ともかく挨拶をして事情を話すと、
「はい、わかりました。まず私が運転しますね。いきましょうか」
おお、なんか優しそうではないか!
最初はおじさん教官が運転、そして替わり、私が運転を始めると、
「いいですね~、その調子。上手いですよ〜」
なんと、何回も何回もとなりから褒めてくださる。
褒め殺しかというくらいの回数だが、もちろん気持ち良いし、楽しい。
思わずS字もクランクもOKになり、見ていた主人もびっくり。
90分があっと言う間に終わった。
おじさん教官はニコニコと、
「大丈夫。運転可能ですよ。
6時間から8時間くらい教習受けて、あとはご主人にとなりに乗ってもらい慣れたら1人で大丈夫です」
ありがとうございました!
主人と大きく挨拶して、15年ぶりの教習所体験は終わった。
とにかく、これだけは言えます。
教官が鬼から天使になってます。
今度は自宅近くの教習所に8時間くらい通う予定ですが、見学に寄ってみたら、受付の女性からもうニコニコ天使の笑顔です。
いつの間にか、教習所は鬼ヶ島から天使の集まる天国になっていたのだなあ…。
恐るべし、15年。
15年の月日はやはり凄かった。
私はやっと浦島太郎の気持ちがわかりました。
と、ふと、となりの主人がさらにニコニコと、
「これで、蕎麦屋行って、蕎麦食べて、蕎麦焼酎飲んでも大丈夫だなあ。」
「そこかい!!」
堕天使がとなりにいました。