vol.1 『ありふれたくじら』について

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ほとんどの種の鯨は季節のうつろいとともに北の海から南の海まで回遊する。途上にはたくさんの国々があり、それぞれに異なる文化がある。ゆえに人が鯨を見る目もさまざまだ。ある土地では鯨をとらえて食べる。ある土地では鯨を人の祖先とみなし、けして殺さない。それぞれの土地で、それぞれの言葉で鯨は語られ、違う物語が紡がれる。そしてその違いは時に諍いを生む。諍いとは、例えるなら1枚の布の上にできた破れ目やほころびのようなものかもしれない。

さまざまな言語において、言葉と布とは近いものとして表される。英語で文章を表す “text” も織物を表す “textile” も、語源は同じラテン語の〈織る〉という動作を表す “texere” であったという。ちりぢりになった布きれを縫い合わせ、刺繍をほどこし美しく生まれ変わらせるように、世界にちらばり時に諍いの元となる鯨にまつわる物語を集め、そのイメージを作り直すこともできるのではないか。リトルプレス『ありふれたくじら』では、さまざまな土地に暮らす人たちにとっての鯨の話を尋ねてまわる。そうして綴った物語に刺繍を添えて、本を編む。やがては1枚のパッチワーク・キルトのように、このリトルプレスがまだ見ぬ鯨のイメージとなり、世界を包むことができるように。


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Vol.1 目次


〈第1部〉

vol.1.1 網地島

vol.1.1.1 くじらっぽね

vol.1.1.2 漁師と鯨

vol.1.1.3 鯨でないもの

vol.1.1.4 かりんとう


〈第2部〉

vol.1.2 鮎川浜

vol.1.2.1 鯨をとる町

vol.1.2.2 船、飛行機、鯨

vol.1.2.3 歯

vol.1.2.4 鯨の卵

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