P.11|とらう / Catch
(「VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」出品作に寄せて)
10代の春休みの一時期、広島県の瀬戸内海にある故郷の島で「漁網編み」のアルバイトをしたことがあった。だだっ広い工場の2階、3〜4名の女性たちが片膝を立てて座り、ゴザの上に広げられた大きな漁網を編み進んでいく。黒光りするナイロンの糸は硬く、仕事を始めたばかりの私の指は3日もすると絆創膏だらけになった。
急にそのことを思い出したのは、それから約15年後のこと。東北で暮らすようになり、2018年に