【ちびまあ】東京
おじいは祭キチだった
アルバムをめくると
法被姿のまあ少年の写真が度々でてくる
もしかしたらおじいは『まあと一緒に』祭りに参加したいと密かに夢見ていたかもしれない
おじいは無理を言わない人だった
ちょっとした小言はあるが決して強要はなくて口うるさくない
おもちゃも好きなだけ買い与えてくれたし、『まあよ行くかい?』とニコニコどこでも車で連れてってくれた
なんでも叶えてくれたり、叶えてくれようとしていたから、
せいぜいカラオケと競輪と夜食以外は、欲を通すこともなかった
俺に対してああして欲しいこうして欲しいはなかった
上京するにあたって『わしも東京へ行きたい』とせがんだことがあったが、頑なに拒否した
そのときくらいなものだ
俺に欲らしい欲をぶつけてきたのは
おじいが植えたキンモクセイ
香りに誘われ眺めてみる
今年もきれいな花を咲かせている
おじいの大好きな秋祭りは明日から、間に合った
晩年は大好きな祭りにも参加できなかった
もしおじいが生きていたら、
『まあと一緒に祭りに参加する』
きっとそう思い描いていたであろう、おじいの欲を満たしてあげたいなぁと後悔先に立たず
それだったら叶えてあげられるのにな、東京より近いし