昔の恋人に会った。
偶然、街中で、彼を見かけた。
気がついたら声を掛けていた。
元恋人は驚いていたけど、当時と何も変わりなく、髪色変わったねぇなんて言って微笑んだ。
それからしばらく道端で立ち話をして、仕事中だった彼は「そろそろ怒られちゃうから」と言ってその場を立ち去っていった。
こんなふうに別れた人と自然と楽しく会話することができる未来が来るとは思っていなかった。
大体いつも私がメンヘラを爆発させて男性の方が呆れて私を捨ててしまうから。
もしくは、私のほうが飽きて一方的に逃げるように去ってしまうから。
平和にお互いの幸せを願って別れた元恋人の背中を見ながら、だけどこんなふうに別れるのもこれはこれで寂しいのかもしれないな、なんて思った。
嫌いでもなく、恨みもなく、どうでも良くもなく、
確実に大切だった人。
大切だと思いながらも別れた人。
もし恋愛関係じゃなかったら、
なんて思う。
けど、大切だったから恋愛関係になったわけで、だからこそ別れたらもう二度と会えない人になるのだから、仕方ない。
恋愛ってそういうリスクを孕んでいる。
元恋人と別れて家に帰る帰路の中で、今の恋人とはそんなふうに別れたくないな、と思った。
もう二度と会えない人になってほしくないな、と思った。
それだけ。