美人という呪い | はじめてのnote
「男は金、女は顔が全てだよ。」
幼い頃から、父親にその言葉を繰り返し唱えられ育ってきた。
大学生、容姿を磨いてお金持ちの男性に好かれる事だけを自分の価値にしていた。
食べたことのない料理を食べ、見たことのない景色をたくさん見せてもらった。
大学の、同級生の男子たちがひどく幼くみえた。
ところがどうだい。
社会人、お金持ちの男達は気がついたら何処かに消え、学生時代からきちんと交際を続けていた友人達は地に足をつけて人生を歩いている。
息苦しくて、孤独で、しんどかった。
「美人はいいよね」
自分を守るために、幸せを手にする為にと必死に縋り付いてきた容姿はこの時呪いの言葉でしかなくなっていた。
「職場で評価されるのはあなたが綺麗だから。」
「男性に好かれるのは美人だから当たり前。」
「え?何それモテる自慢ですか?」
「いや、でもさ、よく見たらそこまでかわいくないじゃん。石原さとみと比べたら…」
うまく行ったことは全て容姿のおかげで、傷ついた話はマウントになる。
挙げ句の果て、勝手に芸能人やらモデルやらと容姿を比べられて批判のネタにされる。
美人は呪いだ。
そう思った。
顔が良ければ全てうまくいくなんて、父はなぜそんな嘘をついたのだ。
そう思った。
だけど、悔しいが確かに容姿で得をした経験がないわけではないのも事実である。
好きになった男性に断られたことはなかったし、学生時代も自然とカーストが高い子達に声を掛けられ仲間に入った。
容姿でダメ出しをされた経験は、確かにない。
けど、だけど。
「私には私の地獄がある」
これはフリーアナウンサーの宇垣美里さんの言葉である。
容姿端麗で学歴もあり、アナウンサーというある種ステータスのある職業についている、「全てを持っている女」の言葉。
この言葉は当時大層炎上していた。
この言葉というより、宇垣美里さん自体が。
だけどそのおかげでこの言葉は私の耳まで届いてきた。
救われた。
こういう人も、言っていいんだ。と、思った。
「苦しい」と、「私も辛いんだ」と。
当時の私は外から見たら「成功した結婚」をした女だった。
夫はイケメンで、お金もあって、都心の高級マンションに住んでいた。
最強の、「玉の輿に乗った美人」というやつだ。
弱音なんて吐いたら総攻撃される。そう思って何も言えなかった。
いつも笑顔で、幸せですという顔をした。
だけど内情はボロボロだった。
普段の彼はとても優しかったけれど、少しでも彼の意向に沿わない行動をとれば空気は一変し、大きなため息をつかれ、淡々とした口調で人格を否定され続ける。
着る服も髪型も決められて、男性のと関わりは全て遮断された。
彼が仕事から帰る時は緊張で手が震えた。
そんな毎日だった。
正直、私にとって恋愛を始めること自体はそれほど難しいことではなかった。
結婚も、したいと思えば難なくできた。
だけど、なぜか付き合うことも、結婚も、最初は良いが後から地獄の日々に変貌していく。
あんなに好きだと言って求めてくれた人が、付き合って少し経つと何故か自分をぞんざいに扱ってくる。誕生日のデートをすっぽかされたこともあるし、急に関係を断たれたこともあるし、元旦那のように豹変して一方的になじられることもあった。
なぜ?どうして?
私ってもしかして男運が猛烈に悪い??
ネットに転がっている恋愛指南系のブログを探しまくり、恋愛系のYouTubeもたくさん見た。
「悪用禁止!男を徹底的に沼らせる方法」
「モテる女の10箇条」
「男性が見せる脈ありサイン」
違う。
そうじゃない。
私が求めているのは恋愛が始まった後の、地獄の沼に落ちた後の対処なのだ。
この、目の前にいる私を苦しめる男が劇的に変わって私を愛してくれるようになる方法なのだ。
だけどあいにくその様な都合の良い記事は見当たらなかった。
原因は、他でもない自分自身にあったからだ。
他人を変えることなど不可能だからだ。
美人の恋愛、行きは良い良い帰りは恐い。
最初の初期設定が簡単すぎるせいで、何も考えずとも成立してしまうから、本当によく失敗したし、傷ついた。
そうやって何度も何度も失敗するからどんどん自己肯定感が低くなり、そうなると余計に恋愛は悲惨なものになった。
そんなクソ恋愛を繰り返し続けた私は最終的にどうなったのか。
まず、元夫との離婚をきっかけに、男ではなく、自分自身に向き合うことにした。
自分が変わるとなんとなくやばいなと思う男たちを避けて歩くことができるようになった。
「外見通りの私」ではなく、本来の自分を出しても尚大切にしてくれる人と出会うことができた。
さらっと書くと、まあ、情報商材みたいでめちゃくちゃ胡散臭い。
だから私はこれから今まで経験してきたクソ男達との戦の記録を、そこから立ち直るまでの経験の全てを、同じように恋愛に苦しんでいる女性達に向けて書こうと思う。
容姿が原因となって苦しんだ経験がある女性たちに向けて。
苦しみを苦しみとすら誰にも打ち明けられなかった女性達に向けて。
もっと美しくなれば報われるのではないかと、必要以上に美に固執してしまっている女性達に向けて。
そして、
他でもない過去のもがき苦しんでいた私自身に向けて。
もちろん
「こうすれば愛される!」とか
「男を変えるたったひとつの手法!」とか
そういったノウハウめいたものは書けないし、書くつもりもない。
あくまでも今までの記憶をしたためていくだけだ。
ただ、これから私の書く恋愛話が、今苦しい恋愛をしている女性たちにとってそこから抜け出すヒントになれたら、それほど嬉しいことはない。
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