【備忘録】出逢ったばかりの贔屓が退団を発表した話④

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◇退団を知った日

そして話は冒頭に戻る。
実を言うと、私がその報せに触れたのは、集合日当日のことではなかった。
私事だが新年度に異動を希望していた私は、そのための昇任試験を1月末に控えていた。ちょうどその直前あたりが集合日になると察し、万が一のお知らせがあったら精神衛生上良くないだろうと2週間あまりのヅカ禁生活を自分に課していたのである。宝塚のホームページを見ないどころかSNSも極力開かないようにし、身近な人にも箝口令を敷いた。
そして、以前お茶会レポで読んだ、贔屓が運転免許を取ったときにどうせなら満点を取ろうと猛勉強した話を思い出し、私も審査書類の準備や勉強に励んだ。
が、結果として、私は試験を終える前に贔屓の退団を知ってしまった。
急ぎのDMに返信しようとSNSを開いた瞬間のこと。公式のスクショと思われる画像が、不可抗力で目に入ってきた。心臓が大きく波打つのが分かった。
見てしまったものは仕方ない。公式で確認するためすぐさまホームページを開き、贔屓が今作唯一の退団者であることを知った。
(ちなみに知人たちは皆このことを知っていたらしい。黙っていてくれていた皆には本当に感謝している。)


◇タイミング

予感はあった。
そもそも学年的にいつそのときが来てもおかしくないし、雪組は上級生が多くいる組だ。今だから言えるが、今回の大規模組替えで名前が出なかった上級生のうち1人くらいは次で退団するかもしれないと思っていた。
贔屓にしてみれば、1期違いで音楽学校時代から一緒だったトップスターを見送り、『My Roots』で名前を挙げていた春野寿美礼さんや未涼亜希さんが退団した研17という学年を終えようとするタイミングだ。いくら別箱といえど『FORMOSA!!』でのポジションの大きさには何となく思うところがあったし、そういえばスカレポの任期もそろそろ終わる頃かなぁと思ったりもした。
でも、『FORMOSA!!』千秋楽のご挨拶を聞くとまだまだ居てくれるような気もしたし、いずれは管理職になれる人だとも感じた。
どれもこれも私の希望でしかなかったのだけれど、私なりにいろいろ考え、今作で退団するかは五分五分だと踏んでいた。


◇贔屓の決意、私の決意

五分五分、ということは50%は覚悟していたはずなのに、いざとなると結構ショックだった。考え抜いての選択だろうから、出逢った頃には彼女は既に決意していたということになるのだろう。そんなのあまりにも寂しすぎる。
異動が叶えば今より劇場に足を運びやすくなる予定なので、新年度になったらもっとちゃんと応援できる、応援しようと思っていたのに。どうやら私は、自覚している以上に久城あすという人のことが好きだったらしい。
考えれば考えるほど寂しくて、寂しいことが不思議だった。
だって私は、劇場に行ったこともなければ、時間をかけて応援してきたわけでもない。手紙やプレゼントを贈ったこともなく、ご本人に対して貢献と呼べるようなことは何一つしていない。遠くからこっそりと見つめるだけで、“贔屓”という言葉を使うことさえ躊躇するくらいなのだ。
それなのにこんなに寂しいなんて、この短い間にも私は彼女からたくさんの幸せを貰っていたのだなと思えた。
だから決めた。彼女の決めたことを精一杯応援しよう、と。
それは、遠くから見つめているだけの私にできる、たったひとつのことだった。


◇宝物

その夜だけは、あちこちのブログやXにお邪魔して、彼女の退団を惜しむ声に目を通した。
既にご贔屓の退団を経験している先人様の言葉も胸に響いたし、「退団の予定を教えてもらえるなんて幸せだよ」「別れを寂しく思う気持ちと未来を応援したい気持ちは両立していいんだよ」という知人(別界隈のオタク)の言葉にも救われた。
だからいっぱい想像した。
「SNSやってくれるかな」とか
「歌うイベントしてくれるかな」とか
「髪を伸ばしたら綺麗なお姉さまになるのかな」とか。
もちろん究極的にはご本人が幸せでいてくれれば表舞台から姿を消してもいいし髪を伸ばさなくてもいいのだけれど、退団後の未来に期待を膨らませる時間は、寂しい気持ちを少しだけ前向きにしてくれた。
本当は彼女の歌う<♪星から降る金>を聴いてから眠りたい気分だったが、それは我慢した。聴いたら感情が溢れてしまいそうだったし、こんなときこそ自分のことに集中しなければいけないと思ったから。試験はあと数日のところまで迫っていた。仕事に身が入らないのを贔屓のせいにするなんて、あってはならない。
その代わり、適当に開いたYouTubeでwacciさんの<♪宝物>を流した。
“君との時間が 君の言葉が 僕の背中押してくれたんだ”
“いつの日か僕ら変わっていっても 決して消えない大切な日々よ”

深く考えてチョイスした曲ではなかったし、親子とか友達とか恋人とか、そういう関係性を歌った曲なのだと思うけれど、贔屓を原動力に試験勉強に励む自分と重なって、なんだか可笑しくなってしまった。
そして、贔屓が宝塚という場所を卒業しても、彼女を応援できた日々が丸ごと消えてしまうわけではないのだと思えた。


つづく

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