卒業式で泣けなかった話

幼稚園の卒園式、私は笑顔だった。同じ幼稚園の子がほとんど進学する小学校に通うことが決まり、そして大きいランドセルを背負うことを楽しみにしていたからだ。

卒園式の日、母親は泣いていた。笑顔の私の両肩を掴んで「なんでお前は泣かないの?これで幼稚園は最後なんだぞ」と詰め寄った。

気迫に押されて、卒園が悲しかったというより母親が怖くて、半べそをかきながら「はい」と返事をした。

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小学校の卒業式も私は淡々と過ごした。悲しくないわけではなかった。ただ、単純に小学校に思い入れがなかった。というのも、転校して小6の6月から通うことになった学校で、愛着が薄かった。また、女子の人間関係の洗礼を受けたため、これが中学生になっても続くのかと内心戦々恐々としていた。

父親に「なんでお前は泣かなかった?」と聞かれた。
これは私が私を下げることを望んでいる問いだとわかった。

「小学校生活、あんまり頑張っていなかったから」と苦し紛れにこたえた。

嘘つけ。私は頑張っていたよ。どんなにいじめられても、どんなに苦しくても風邪以外で休んだことはなかったんだ。

私の答えを聞いて、「そうだな」と父親は満足そうに頷いた。


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中学の卒業式も私は泣かなかった。息をしてるのもやっとの中学校生活だった。いじめられ、家にも学校にも居場所がなくて、自殺を企てては失敗した。私なんかいない方がみんな幸せになれるのに、なぜ私は死ねないんだろうと爪を手に立てて引っ掻いた。私が痛みという罰を受けたら、何も変わりゃあしないのに、勝手に救われたように思った。

1人になってわんわん泣いた。大好きな先生に、ありがとうが言えなかった、と。


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高校の卒業式、私はようやく泣けた。隣の席の子に、前々から「私隣で泣いていると思う」と言われ、私とその子2人で泣いているんだろうなと思っていた。式中、隣を見たらその子は泣いていなかった。「○○ちゃん泣くって言ったのに泣いてなかったじゃん!」とあとでからかった。

父親が言った通り、頑張っていないと泣けないのなら、その理屈は私には合っていなかった。

高校生の時より中学生の時の方が頑張っていたよ。生きるのに必死だったんだ。

つまらない理屈で責められた日々よさらば。私は私の日々を生きるんだ。


という、思い出したこと。来年の大学の卒業式は私はどんな顔をしているのかな。

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