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是枝監督→風吹ジュンさん→柄本佑さん@座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル

大学でドキュメンタリーを学んでいる娘から「是枝監督のトークショーあるよ」と誘われ、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルに行ってきた。
私は是枝作品のファン。映画も本も好き。
この日は、1991年に是枝監督が製作したドキュメンタリー作品を
鑑賞、そのあとトークショーという流れ。
是枝監督のドキュメンタリー作品、
NONFIX「もうひとつの教育 伊那小学校春組の記録」は
春組の生徒がファームから 子牛を一頭借りて、育て、ファームに返すまでを追った記録。子牛の餌代の計算から算数の学習に発展したり、子牛が生理を迎えたことを
機に子供たちが性について自ら考え、ファームに返す理由を子供たちに語らせることで
「なぜ返すのか、自分たちにとって子牛はどういう存在だったのか」
ということを考え、気づかせる。

会場には当時の春組の生徒、担任の先生の姿があり、
今現在、是枝監督とグループLINEで繋がっているというエピソードが
その教育の成果のようでもあり、私の中では一番温かく響いた。

伊那小学校春組の撮影は、是枝監督が会社で役に立たない自分が嫌になった時期の
”逃げ場”でもあったと語っていた。嫌になっただけでなく、
会社に行かなくなった時期もあったとか。

鬱々とした気持ちに正直に、逃げ場を見つける。
逃げ場はいつしか”行き先”に変わり、道が開ける。

壁もないところで、何をしていいかわからず、足踏みばかりしている近頃の私は
いきなり行き先を見つけようと焦っているから、前に進めないのかもと
是枝監督の言葉に視界の靄が少しだけ薄くなった。

是枝監督のドキュメンタリーのムードを感じるフィクションのルーツにも
触れられたようで、とてもいい時間になったと娘に感謝。
ちゃっかり記念撮影もしてもらった。

私は元々ドキュメンタリーが好き。
娘は全日程参加するとのことで、私も2日目も参戦することに。
2日目は
ジャーナリスト金平茂紀さん推薦の「ナワリヌイ」。
金平さんがお話しされた「ロシアの希望と絶望」をまさに感じる作品。
プーチンの天敵、ナワリヌイの毒殺部隊をあぶり出す過程は
ドキュメンタリーとは思えぬ、サスペンス映画並みのハラハラ感。
娘と「これは見てよかった」と、3日目も参戦決定。

3日目は、2本鑑賞。
1本目は「ラ・カチャダ」と風吹ジュンさん×山崎裕さんのトークショー。
カチャダとは”逃れられない状況”の意味を持つそうで
母親になることの側面を改めて考えたりした。
内容は、DV、虐待などの問題を抱えるシングルマザーが
自らの問題を”演じる”ことで乗り越えていくという作品。

シンママ支援については最近も色々あったけれど
出会いや恋愛するのが難しいことの手前に
”ひとりで抱える相談しにくい問題”の理解がやっぱり必要。

あまりに大変で孤独で、子供につらく当たってしまう。
いい母親を求められすぎて、逃げ出したい。

言いづらい、でも間違いではないその感情を受け止め自認することのできる
「ラ・カチャダ」みたいな場所があれば???
じゃあ、私は何をする? 
これは日々考えていることで、勉強もしたりしているのだけど
考えすぎる節があるのか、動き出すには知識が足りないのか
早1年以上、なんの形にもできずにいる。

監督のマレン・ビニャヨは女優の肩書きも持つそうで
どこかで見たことがあるのは、そのせいかな。
作品を思い出せず、作品も検索でヒットせず。

映画の後、風吹ジュンさんの登場に心が和む。
すごく好きな女優さんで、一度インタビューをしてみたい憧れの人。
風吹さんは、中学生のときにご両親に育児を放棄され
お兄さんとの二人暮らしを経て、女優に。
シングルマザーとして2人のお子さんを育て上げ
現在はお孫さんが4人もいるとか。
根性の人だけあって、語り口がかっこよかった。
家庭環境が人生に及ぼす影響は大きいけれど
風吹さんが負けずに、負の連鎖を断ち切った要因はなんだったのか。
Q&Aコーナーはあったのだけど、時間なく聞けなかった質問。
お兄さんの愛なのかな。気になる。

2本目は「まひるのほし」と柄本佑さん×山崎裕さんのトークショー。
知的障害を持つアーティストの個性をなんとも魅力的に切り取った作品。
作品は、彼らの言語であり、頭の中。
井上陽水さんの曲の使い方も珍しく、印象的で
もう1回見たくなる作品になる気がした。
佐藤真さん他、豪華スタッフが名を連ね
エンドロールもしっかりチェックした方が良いとのこと。

2作品の上映の間に「スープとイデオロギー」の上映とヤン・ヨンヒ監督の
トークショーがあったのだけど、次女の習い事の送迎があり諦めた。
私が参加した日程の中では、これが一番人気。
娘もこの作品の大ファンで、すでに2回鑑賞している。
まだ横浜なら上映しているとのことで、明日行ってみようかな。

ここ最近、ファッションの原稿などでは特に「多様性」、「多様化」という
フレーズを使う機会が増え、トレンドっぽく扱っている気がして
すごく気になっていた。ドキュメンタリーを数本見たぐらいで
まだまだ薄っぺらくはあるけれど、知ることができたのは良かったと思う。
情報と、実際の日常をのぞくのでは、リアリティがまったく違う。

フィクション作品も大好きだけど、フィクションもある意味
「どう演じるか?」「どう撮るか?」というキャストたちのドキュメンタリー。

と、ゴダール引用で柄本さんも言っていたけど、本当そうだと思う。
インタビューが好きな理由も、同意。
ドキュメンタリーもインタビューも、「人を好き」になるきっかけにもなる。


ちなみに、今年のドキュメンタリーフェスティバルは「教育」がテーマ。
是枝監督が今、教育をテーマにドキュメンタリーを撮るならば、視点はどこに行くのか。これも気になる。
いい余韻が残る、3日間だった。



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