第13話 女のままだったら

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「悠様。お着替えは終わりましたか?」
「あ、はい」

小笠原さんは目隠しに使っているネクタイを外すと、クローゼットの中から黒のダブルジャケットとグレーベストを取り出す。

「本日は準礼装での登校です」
「あっ、準礼装…」

そうだ、ここは金持ち学校。一般の高校とは違う。

「悠様は面白いですね」

私は苦笑いを浮かべながら、目を前に向けた。そこには全身鏡に映った自分の姿がある。

グレーストライプのスラックスに白無地のシャツ。目の前にいるのは、どっからどう見ても良い制服を身に着けている男子生徒だった。

「…よくお似合いです」

耳元で囁かれる声。

「悠様なら…深い藍色のドレスも似合いそうですね」

鏡の中にいる小笠原さんと目が合う。私は、ふいっと目を逸らした。

「ネクタイ、早く結んでください」
「かしこまりました。では、失礼いたします」

小笠原さんはそう言うと前から私の首にネクタイを通し、慣れた手つきでしゅるしゅると結んでいく。

「…俺の前だけなら、女の子でいて良いよ。
誰にも言わない。だから自分らしく、ね」

小笠原さんの優しい声。ちらりと目の前にいる小笠原さんを見れば、私のネクタイを結びながら微笑む姿がある。

「…綺麗に結べました」

次はグレーベストを開く小笠原さん。私は腕を通し、ボタンをかけた。

「(女の子、か…)」

そして、小笠原さんはダブルジャケットを広げる。
鏡の中には、男性の準礼装を身に着けた私が情けない表情で立っていた。

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