第5話 階級制の寮で生活
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「悠様、どうかされました?」
横から小笠原さんに顔を覗き込まれる。驚きのあまり、思わず大きく肩が上がってしまった。
「いっ、いや。ただ、ここの学院はすっごく大きいんだなーと思いまして」
小笠原さんの顔から、もう一度阿久津涼がいた場所へ目を戻す。そこには、もう誰も立っていなかった。
「では、階級制の寮の説明をさせていただきますね」
「へ?階級制?」
階級制の寮って何?全寮制とは聞いていたけど…階級なんてあるの?
「ええ、ルミエール学院では3つの階級に寮が分類されています。
ステラ寮は、入学者全員が必ず住むビギナー寮。桜庭様は、こちらの寮ですね」
そう言いながら、目の前の小さな寮を手で示す小笠原さん。ステラ寮の証である星型のステンドグラスがキラキラと輝いていた。
「次にルナ寮」
ステラ寮の少し離れたところにある寮がルナ寮。月型のステンドグラスがあり、ステラ寮と比べてちょっと豪華な作りになっている。
「そして最高権威のソーレ寮。以上、3つございます」
最高と言うだけあって、ソーレ寮はとても大きい。円形ドームに贅沢な外観が素敵な建物。
「荷物は全て寮に運んであります。荷ほどきを致しましょう」
「へっ!?いや…荷ほどきは自分でやります!大丈夫です!
あの…小笠原さんは…ほら!散歩!散歩でもして、リラックスしててください!」
荷物の中身を見られたら困る。だって中には…女性特有の衣類やら何やらがあるのに。
「悠様…。私めを気遣ってくださるなんて…ありがたき幸せ」
そう言いながら、小笠原さんは胸に手を当ててお辞儀する。
「ですが、悠様だけに荷ほどきをさせるなんて…できません。」
私はどうしても、1人で荷ほどきをしなくてはならない。
「こ、これは命令です!荷ほどきの時くらい、1人になりたいので…。
それに…あの…ローズティー!
ローズティーが飲みたいので、バラの花びらを集めてくれると嬉しいなー!…なんて」
慌てて言う私が面白かったのか、小笠原さんは柔らかい笑みを口元にのせる。
「かしこまりました。では、お花を摘みに行って参ります」
そう言いながら、べこりとお辞儀をして立ち去る小笠原さん。
「は、はい!行ってらっしゃいませ!」
私は小笠原さんの背中が小さくなるまで見送った。
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