第6話 荷ほどきは1人で
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ステラ寮の部屋に足を踏み入れる。部屋の中は白とナチュラルウッドを基調とした部屋になっていて、とても過ごしやすそうだった。
白い革張りのソファーとガラスでできたローテーブル。ランプ付きの勉強机に、ベッドは使ったこともないキングサイズ。そして大きなタンスが置かれていた。
「(とりあえず…下着類はタンスの奥にしまおう。
衛生用品は…鍵付きの引き出しの中で良いか!)」
小笠原さんが来る前に、見られちゃいけないものを先にしまわないと。
キャリーケースの鍵を外し、ナチュラルウッドを利用した大きなタンスの引き出しを開ける。中から、ふわっと木の香りが漂った。
とりあえず下着や衣類を全て詰め込む。衣類を詰め終えた時、ふと気が付いた。
「(家にある洋服を全部持って来たのに…それでも、半分以上スペースが余ってる…)」
金持ちってすごい…。って感心してる場合じゃないや。
「にしても広いなー。私が使ってた部屋の何倍だろう…」
薄いレースカーテンを開ければ、目の前に広がる大きなバルコニー。デッキの上に足を乗せれば、綺麗な花畑と噴水が見える。そして、その中を縫うように歩く小笠原さんの姿も。
「ふふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
男装さえしてなければ、きっと小国のお姫様気分を味わえただろうに。
バラを集め終えたらしい小笠原さんは、静かな足取りでステラ寮へ戻って来る。私の視線に気がついた小笠原さんは、胸に手を当ててお辞儀をした。私は、ペコリと会釈を返す。
ぶわっと強い風が吹き、目をぎゅっと閉じた私。次に目を開けた時、階下にいたはずの小笠原さんは居なくなっていた。突然すぎる出来事に、デッキの柵から大きく身を乗り出す。
「お待たせいたしました。悠様」
「うわあ!!!」
背後から聞こえてきた声に、思わず叫び声を上げる。その拍子によろけてしまった。
耳元で聞こえてくる小笠原さんの声。胸下に回された腕。自分の背中に感じる体温。
「…失礼いたしました、悠様。なにぶん、危険だったもので…。でも…男同士なら、ドキドキすることもないでしょう。ね?」
「そう…ですね」
小笠原さんは小さく笑ったあと、そっと私をデッキの真ん中に下ろす。
待ってください、小笠原さん。…心臓が口から飛び出そうです。
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