第4話 私に向けられる目

.

「違う…って何が?」
「金持ちっぽくないって言うてんの。
お前、何者なん?桜庭グループなんて、聞いたことも見たこともないんやけど」
「そうだなあ。どんな事業してるんだよ」
「僕も気になるー!どんな会社なの?」

気が付けば、沢渡晃介に加えて滝島草汰と福澤淳平がいる。福澤淳平に関しては単なる好奇心だと思うけど、それ以外の2人は疑心暗鬼の目を向けてくる。

「そ、れは…」

チラリと小笠原さんに目を向ければ、小さく首を傾げている。

そうだ、小笠原さんは私のお世話だけをしてくれる執事。誰にも助けを求めることはできない。

「それは…何?」

早く答えるようにと滝島草汰が促す。

「皆様、申し訳ございません。
桜庭様は、この後編入手続きがございますので。
これにて失礼いたします」

「行きましょう桜庭様」と声をかけて、私の手を取った小笠原さん。

「…失礼します」

私はペコリと頭を下げて小笠原さんの後に続く。食堂のドアを開けて待つ小笠原さんにペコリと頭を下げて、そのまま部屋を出た。

長くて静かな廊下。大理石の床の上には、真っ赤な絨毯が敷かれている。3メートル以上ありそうなアーチ型の窓から太陽の光が優しく入り、小笠原さんの髪の毛を照らしていた。

「…あの、小笠原さん…」

ここで、お礼の言うのはおかしい…よね。

「はい、何でしょう」

振り向いた小笠原さんの黒髪が反射して、まるでシルバーアッシュのように見えた。

「えっと…編入手続き、あったんですね」

学院長から何も聞いてない。けど、小笠原さんがその一切の手続きをしてくれたのかな。

「いえ、ございません。
ただ…やけに緊張して固まっておられたので」

そう言いながら、小さく微笑む小笠原さん。その微笑に思わず見惚れてしまいそうになる。

「…折角ですから、寮へ向かいましょう。ご案内いたします」

小笠原さんにエスコートされ、校舎本館を出た私たち。ふと後ろを振り返れば、阿久津涼が窓からこちらを見ていた。

私の作品に目を通してくださり、誠にありがとうございます!宜しければ、フォローやサポート・シェアもお願いいたします(つД`)。