![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169182049/rectangle_large_type_2_3e2c1674b350ed11b2baec1b6e7f76f3.png?width=1200)
<小論文>問題集①:正しい戦争と不正な戦争
設問のあとに2000字程度の課題文、サンプル答案とコメント(添削)、解説、採点基準(理解力・分析力・思考力・表現力の観点別)を掲載していますが、いずれも有料記事になります。有料記事の購入方法は、noteの 関連ページ を参照してください。なお、有料記事の複製や譲渡は厳禁とします。
<問題>
設問 以下の文章を読み、「正義戦争」と「不正義戦争」との違いを簡潔に説明した上で、これらを読んで、その論点や内容を参考としつつ、「それでも戦争は正義ではない」と題する主張を展開してください。(600-800字)
<課題文>
戦争の倫理を論じる際、「正義戦争」と「不正義戦争」という枠組みは非常に重要である。アメリカの政治哲学者マイケル・ウォルツァーは、戦争が倫理的に正当化されるためには、戦争の目的やその実行方法が特定の基準を満たすべきであると主張する。彼の提起した枠組みを用いて、第二次世界大戦を「正義戦争」として評価し、その正当性に関する考察を深めることは、戦争倫理の理解において非常に意義がある。この考察を通じて、正義戦争の条件と、その実際の適用における難しさ、さらには戦争の倫理的評価の難しさを明らかにしたい。
第二次世界大戦(1939-1945)は、ナチス・ドイツを中心にした枢軸国と、連合国との間で繰り広げられた大規模な戦争であり、戦争の規模、破壊的な影響、そして戦後の世界秩序における変革において、20世紀で最も重要な出来事の一つとされている。ドイツのポーランド侵攻に端を発し、次第に世界中に広がったこの戦争は、最終的に連合国の勝利に終わった。戦争が引き起こした数々の人道的問題、特にホロコーストを含む大規模な民間人の虐殺が注目されており、戦争の正当性とその倫理的評価は、戦後の政治的・社会的議論の中心となった。
ウォルツァーが述べる「正義戦争」の基準に従えば、第二次世界大戦は明確に正当な戦争であったと評価されるべきである。その主な理由は以下の通りである。
第二次世界大戦の連合国の戦争目的は、基本的にナチス・ドイツの侵略に対抗すること、すなわち自国を守ることと他国、特にポーランドやフランスなど侵略された国々を支援することであった。この戦争は、攻撃を受けた側が防衛するという、最も基本的な正当な理由に基づいており、ウォルツァーが述べる「jus ad bellum」(戦争を始める正当な理由)の条件を満たしている。侵略者に対する防衛戦争は、正義戦争の最も基本的な要件の一つであり、連合国はこの点において正当性を有していた。
ナチス・ドイツは既にポーランドを侵攻しており、その拡張主義は止めることができない状況にあった。連合国は当初、外交的手段や経済制裁を通じて解決を試みたが、ドイツは一切応じなかった。ウォルツァーの「最後の手段」という基準においても、連合国は戦争に突入せざるを得ない状況にあり、戦争を避けるためのあらゆる手段が尽くされた結果として、正当化されるべき戦争であったと言える。
第二次世界大戦における連合国の戦争の目的には、ナチス・ドイツによるホロコーストやその他の人道的危機を終結させるという側面もあった。ホロコーストは、民間人を対象とした無差別な虐殺であり、その防止や救出活動は戦争の正当性を強化する要因となった。ウォルツァーは、戦争の目的が防衛だけでなく、人道的な理由にも基づいている場合、その戦争が正当化されることを示唆しており、第二次世界大戦の連合国による介入は、この観点からも正義戦争と見なされるべきである。
ただし、第二次世界大戦が正義戦争であったとしても、その実行においては多くの倫理的な問題が存在した。ウォルツァーの「jus in bello」(戦争の進行中の行動)という基準に照らすと、連合国の戦争行為にはいくつかの倫理的に問題となる側面があった。
第二次世界大戦の間、多くの民間人が戦闘行為によって犠牲となった。特に、連合国による都市部への無差別爆撃が大きな問題となった。ドレスデン爆撃などは、軍事的な戦略として重要な都市を攻撃したとされる一方で、多くの民間人が犠牲になったことから、その倫理性が問われた。このような無差別攻撃が正当化されるべきかについては、戦後の議論でも議題となった。
戦争の目的が正当であっても、戦争の手段や戦争中の行動が非人道的であった場合、その正当性は問われるべきである。連合国が戦争を通じて達成しようとした目的は、ナチスの抑制と国際秩序の回復であったが、そのために行われた戦争行為がどの程度倫理的であったかは慎重に評価されるべきである。
第二次世界大戦は、ウォルツァーが提起した「正義戦争」の基準を満たす戦争であったと言える。戦争の目的が防衛的であり、また人道的な理由が加わったことがその正当性を支持する。しかし、戦争が進行する中で多くの非戦闘員が犠牲となり、無差別爆撃などが行われたことから、戦争の実行においては倫理的な問題も多かった。ウォルツァーの枠組みにおける「jus ad bellum」や「jus in bello」の条件を考慮すると、戦争の目的が正当であったとしても、その手段については慎重な評価が求められる。このように、正義戦争の評価は単に戦争の目的にとどまらず、その実行過程における倫理的な配慮が欠かせないことを改めて認識させるものである。(独自作成問題)
<サンプル答案>
ここから先は
¥ 500
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?