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【観劇】tick,tick...BOOM!

 私は薮宏太のファンである。
 「薮様」というウチワを振り続けて早幾年。いわば「薮帝国民」だ。
 というわけで、ここからも薮「様」という敬称を使うけれども、そこはそういうものだと流してください。

 薮様の何が好きって、歌声が好きだ。
 とはいえ、実は、「世界一歌がうまい」とは思ってない。ただ、「薮様の、歌うことが大好きという姿勢が好き」であり、私は「薮様の歌声が世界一好き」というだけである。
 そういうわけだから、薮様+ミュージカルは、いつもめちゃめちゃ気分があがる。
 今回のtick,tick...BOOM!にしても、そうだった。

※今回の感想はネタバレあります。
 大千秋楽が終わってる舞台だから、そこは大丈夫だと思うけど、これから映画を見るとか今後見る予定があるとかの方はご注意ください。

 
 結論からいえば、本当に見て良かった!!
 薮様の歌声も姿も、めっちゃめちゃ堪能できて、幸せだった!!!!
 三人芝居ということで、共演の方々のスキルも素晴らしくて、夢中になっているうちに舞台が終わるような感じだった。

 リチャードくんは、生で拝見するのは初めてだったけど、彼はミュージカル界でもっと活躍してほしいなあ。
 単純に、あの外見は「武器」だと思う。
 輸入ものが多いミュージカルで、しかもアメリカものだと、どうしても「人種」というのは避けて通れないフィルターだったりする。
 作品によっては、日本語化のときにあえてそこにはフォーカスしないという選択もあるのだけど(実際言語化しにくい、アメリカ独自の「感覚」だと思うし、それは私はありだと思ってる)、そこを自然と表現できるのは強くない?? と私なんかは思うのだ。

 「感覚」といえば、マイケルがHIVを告白するシーン。
 あの「絶望感」を、今時の子の薮様もリチャードくんも、すごくよく表現できていたなあと思った。
 実際それはちゃんと伝わってたようで、若い子の感想に「触れるのも怖いくらいなの?」というのも見かけた。
 私はおばさんなので、1990年代の記憶もわりとある。そしてあの時、HIV(日本ではエイズって言い方のほうがポピュラーだった気がするけど)患者に対する偏見はすさまじかったと、断言できる。それこそ、触れることも怖いくらい。
 最初にゲイや薬物使用者の間で広まったこともあって、『天罰だ』とか『変態の病気だ』とか言われてたんですよ。今じゃ、とんでもないことだけど。
 …とはいえ、コロナの初期は、『遊んでるやつがかかる』みたいなイメージあったものねえ。人間の『穢れ』に対する意識は、やっぱりそうそうアップデートできないものですね。
 …話がそれた。

 舞台中、マイケルの告白でジョナサンの意識は大きく変わる。子供のように泣いて歌うジョナサンに、こっちまでもらい泣きしてしまった。
 …でも、結果として。マイケルより先にこの世を去ったのは、ジョナサンのほうだった。
 なんて皮肉なことなんだろう。

 そう、…これは本当に、ひどい感想かもしれないけど。
 tick,tick...BOOM!という作品が、ラストに観客の心にざわつく感情を残す理由は、このあとジョナサンが、約束を守って大ヒット作を生み出す…その直前に、亡くなってしまった、という『事実』だと思う。
 それが、未来に向けてハッピーに終わるこの作品に、一筋の、それでいて深いしんとした暗い影を落とし、その運命のいたずらさにどうしようもなく心が乱される。
 数奇な、切ない、皮肉な。そんな運命は、実のところ、とてつもないエンタメなのだと私は思う。
 
 アイドルを応援することは、私はずっと、『ローマで剣闘士に熱狂するのと同じ』だと思っている。
 見世物として闘技会戦う剣士と、そこに熱狂するファン。その図式から、一歩も進んでない。
 なぜなら、私が一番夢中になり、心躍り、熱狂しているのは、『彼らの命がけの、ショーという名の人生』だからだ。他人の人生を見世物として消費している。その自覚は持っていたい。
 ただ。
 それほどに、『人生』はなにより魅力的で、それが創作(ショー)と相乗効果をもたらしたとき、爆発的にきらめく。それは、私にとっての事実なんだと思う。

 tick,tick...BOOM!を見終わって、ふと、そんなこと考えたりした。
 皮肉屋で夢想家のジョナサン・ラーソンなら、私のこんな気持ちを、どんな風に『言葉』にしたのだろうか(舞台中の、周囲を表現する彼の言葉はどれも素晴らしかった。翻訳家の方の努力もすごくあるんだろう)。

 …正直、まだ、観劇感想としては満足できていない。
 とっちらかりすぎだし、まとまってない。
 でもまあ、今日のところはこれはこれで。

 よろしくお願いいたします。

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