ゴミとして処分された元保護犬「こつぶ」ちゃん

 私には「いち」と「みつ」という養い子がいる。
 2019年の夏、我が家の庭で生まれた10匹の野良子猫のうちの2匹だ。
 10匹の子猫。
 当然ながら、我が家全員で途方に暮れた。弟の猫は、昼間は親が預かっているのだが、その子は白血病の因子を持つ子で、他の猫と接触させる事が出来ない。
 弟が伝手を頼って7匹までは引き取って貰えたけれど、その時すでに母猫の後ろについて散歩を始めていた3匹は引き取って貰えなかった。
 検索して見つかった犬や猫を保護しているボランティア団体に連絡したが、条件をつけられた。
「人の手に慣れさせて下さい。それから写真を送って下さい。ただし、ハチワレはダメです」
 最後の条件が意味分からない。
 ともかく、既に素早い動きを見せていた子猫を捕獲する事から始めなくてはならなかった。
 捕獲したが、人を受け入れてくれない。大暴れのパニック状態になる子猫をなんとか抱っこ出来るようになって、四苦八苦の末、写真を撮り、ボランティア団体に送ったのだが、返事がこない。
 しばらく待っていても連絡がないので業を煮やし、電話した。
「遅すぎる。以前連絡があった時ならば引き取れたのに、もう余裕がない。なぜ早く送って来なかった」
 条件出したの、そっちじゃね?
 振り出しに戻った引き取り先探しは、会う人会う人に「猫いらない?」と声を掛ける絨毯爆撃になった。
 見かねた同僚が、色んな人に聞いてくれて1匹の里親を見つけてくれた。
 しかし、あと2匹残っている。
 そんな時、ダメ元で連絡を取ったのが「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」さんだった。
 すぐに返事が来た。
「里親を探すお手伝いは出来ます」との事だった。
 譲渡会に参加した。何人か引き取っもいいと言ってくれる人がいたが、飼育環境などをヒアリングしたワンニャンピースマイルの方が「猫を飼える環境ではない」とお断りして下さった。
 犬や猫が幸せになれるか否か、犬や猫の命を預かって責任持って愛してくれる人か否かを見極めて、少しでも不安要素があるならば、引き渡さない。犬や猫の幸せの為に真剣に活動している団体だった。
 結局、紆余曲折あったが、いちとみつは私の養い子になった。
 私の子にする事が決まった後もワンニャンピースマイルさんにいろいろ相談した。
 元気いっぱいヤンチャ盛りだったいちとみつは何度か脱走したので。
 その時も、捜索のアドバイスなど、親身になって対応して頂いた。

 そのワンニャンピースマイルさんが元保護犬の「こつぶ」ちゃんが迷子になったとツイートされたのは1月22日のことだった。
 こつぶちゃんが事故に遭い、ゴミとして処分された旨が投稿されたのは、1月25日だった。


 こつぶちゃんは、飼い主が判別出来るマイクロチップをつけていたのだが、チップが活かされる事はなかった。飼い主さんの知らない間に事故に遭い、ゴミとして処分された。
 飼い主さんから離れてしまい、こつぶちゃんはどれほど心細い思いをしただろう。怖くて怖くて、事故に遭って痛くて辛くて、そして見知らぬ人間に回収されて、ゴミと一緒に焼却炉に投げ込まれたのだ。
 飼い主さんは、こつぶちゃんに会う事も、骨を拾ってあげる事も出来なかった。
 想像するだけで胸が詰まる。
 ペットのことぐらいでと言う人もいる。そういう人達にとって、ペットとはどういう存在なのだろうか。
 私にとって、いちとみつは大切な我が子だ。
 我が子を守りたいし、幸せにしたい。いつだって安らかに楽しく過ごしていて欲しい。
 また思いがけない盲点をついて脱走してるんじゃないかとか、暑過ぎないか寒すぎないか、仕事中も気になる。
 ペットカメラやGPS、脱走した時用のアイテムを探したりもするけれど、今はまだコレというものに出会えていない。マイクロチップも、当然、検討対象に入っていた。

 マイクロチップには飼い主の情報が登録されており、チップをスキャナーで読み込むと、その情報から迷子や、不運にも事故に遭った子の情報が飼い主さんに届く仕組みのはずである。
 それが活かされずに、処分される犬や猫がいる。
 スキャナーが設置されていないとか、管轄が違うからとか、行政によって対応が違うらしい。

 令和4年6月から、犬や猫を飼う時にマイクロチップ装着が義務化される。
 マイクロチップ装着には数千円から1万円の費用がかかり、別途登録料が掛かる。今は1,050円だそうだが、4月から変わるらしい。
 安全性は保証されているとの事だが、手術の際に自分の体に異物を入れた時、違和感が半端なかった。小さなチップとはいえ、犬や猫にとって、紛れもなく異物だ。
 さらに飼い主に費用負担がある。
 義務化するというのであれば、相応のシステムが行政側に「既に」構築されているべきではないか。
 今の時点で犬や猫にマイクロチップを装着している飼い主は、万が一を考えての愛情から保険をかけたのだろう。今回の出来事は、そんな飼い主の愛情を踏み躙ったと言ってもいい。
 活用出来ないシステムを義務化しようとする杜撰さはマイナンバーカードに始まりコロナ対策等々にも通じるところがあるのではないか。
 枠だけ作って中身がない。
 細部まで作り込んでから提供して欲しいと思う。

 今、ワンニャンピースマイルさんは各方面にこの問題を訴えている。
 このご時世だ。後回しにされて問題が解決しないまま義務化になるような気がする。
 それでも、1人でも多くの人に知って貰いたいので、私も声をあげる。
 こつぶちゃんの悲劇を繰り返してはならない。

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